2013年10月25日

道迷い

 天気は快晴、展望も上々、体調はばっちり。
 あなたは快調に尾根道を歩いている。
 
 あなたは休憩所に差し掛かった。
 ベンチやその周りには、大勢の人が疲れた顔をして休んでいる。

 あなたは、駅を通過する特急列車の気分だ。
 悠々と、誇らしげに休憩所を通り過ぎる。

 しかし、どうも道の様子がおかしい。
 一応、踏み跡はついているのだが、どうもしっくり来ない。
 あなたは道に迷ったのだ。


 実は、これは、高尾評論自身が犯した道迷いだ。

 高尾評論が高尾の山歩きを始め、間もない時だ。
 場所は北高尾山稜、時期は11月下旬の3連休、紅葉がぼちぼち始まった頃だ。

 高尾評論はひとり、陣馬山から陣馬高尾縦走路を経て、堂所山から北高尾山稜に入った。
 時刻は12時過ぎだ。
 日は短いとはいえ、ちゃちな地図を見る限りは八王子城跡まで十分行ける時刻だと踏んだのだ。

 関場峠を順調に過ぎ、登り返しも気持ちよく進む。
 その先にちょっとしたピークがあり、ベンチを中心に20人近くが座っていた。
 静かな北高尾とは言え、さすがに紅葉の時期なので、こんなに人が出ているのだろう。

 ピークを左に折れ、緩い斜面を下って行く。
 踏み跡は充分にあり、枝にはピンクのリボンも結んである。

 何だか地面が柔らかくなった気がした。
 それでも、踏み跡はしっかりしているし、緩やかな尾根は続いている。
 
 そのうち、斜度はあまりなくても、道が崩れやすくなってきた。
 他に道がないか、慎重に見極めながら尾根道を下って行く。

 地図を開いてみると、どうみても北高尾山稜の縦走コースではない。
 しかし、もう元の場所に戻り、北高尾山稜を歩く気力はない。

 高圧線の下に出た。
 ちょっとした広場になっている。
 この道で大丈夫だろう。

 どんどん高度が下げる。
 しかし、この道のもろさは尋常ではないと思い始めた。
 それでも踏み跡を選び、慎重に下って行った。
 
 やがて、展望の良い所に出た。
 谷を隔てた向こうには、鉄筋の建物が1軒だけある。
 あれはくぬぎ沢橋にある老人ホームだ。
(現在は取り壊され、跡形もない)
 陣馬高原下までのバスで何度も通っているところなので、間違いない。
 あそこまでの標高差は70〜80mくらいだろうか。
 
 しかし、この先、どう見ても、道らしきものが見つからない。
 強引に下っても、バス道路は谷の反対側だ。
 かなりの水量を持つ案下川を渡渉するかもしれない。

 高尾評論はやっと後戻りをする決意をする。
 ここまで、10回以上、止まっては考え、また進むことを繰り返していた。
 そのため、道迷いを起こしたと思われる場所から1時間以上が経過していた。
 
 気を取り直し、元来た道をがんがん登ることにする。
 帰りは30分で元の場所に戻ってきた。
 
 ここにはもう誰もいなかった。
 ちゃんと見ると三本松山と書かれていて、八王子城跡への標識もあるではないか。
 先ほどはちょうど、ハイカーが道をふさぐような形で座り込んでいたため、高尾評論は何の確認もせずに道なき道を選んでしまったのだ。

 気を取り直して、高尾評論は八王子城跡へ向かい、北高尾山稜を歩きだした。
 高尾評論の第2のミスは、この先、一度も地図を見なかったことだ。
 その前にだいたいの地図は頭に入っていたため、今度こそ標識を見落とさないようにいけば、八王子城跡にたどり着けると思ったのだ。
 
 それなりに急いではいるが、北高尾山稜は、陣馬高尾縦走路のように平坦ではない。
 東に延々と続く尾根は、ピークを登り返しても、また次のピークが目の前に立ちはだかる。
 
 気持ちだけ急いでも、足がついてきてくれる訳ではない。
 だんだんスピードが落ちてくる。

 八王子城跡の山頂と思われるところに着いたときには、かなり暗くなってきた。
 東京の夜景が見え始めた。
 懐中電灯は持っていない。

 後は下りだけだ。
 高尾評論は走るように石段を下った。

 そのとたん、目の前の景色が急変した。
 足を木の根か何かに引っ掛けたのだ。
 そして、石段の鋭角の突起に左肩を思い切りぶつけた。

 数分間だと思う。
 声も出ないほどの激痛が続き、道のど真ん中で動けないでいた。

 石段の地面は冷たく、その上を吹く風は冷たい。
 このままではまずい。
 高尾評論は右手で左肩を抑えながら、ほとんど暗くなった道を下った。

 八王子城跡の管理事務所に着いたときは、完全に暗くなっていた。

 その足で、総合病院の救急外来へ直行し、骨に異常がないことを確認した。

 
 道迷いは、分岐点で良く起こるのは分かっているが、人や車がいると、どうしてもそちらの方は見ないで進むことになる。

 高尾山域で道迷いをしたという情報が一番多いのは、明王峠だ。
 陣馬山から陣馬高尾縦走路を景信山へ向かうつもりが、相模湖駅の方へ降りてしまうのだ。
 陣馬高尾縦走路は、斜め左の杉林の暗い感じがする方向へ進むのが正解だ。
 ただ、トイレに沿った明るい階段を下りたくなってしまうのだ。

 次に多いのが小仏峠で、景信山から来て、小仏バス停に下るケースが多い。
 陣馬高尾縦走路を行くには、廃屋の右側を通り、再び登るのが正解だ。

 その次に多いのが景信山頂で、やはり小仏バス停に下ってしまう。
 陣馬高尾縦走路を高尾山方面に行くには、直角に右折し、まず1軒目の茶屋の軒先の左を通り、次に2軒目の茶屋の右を通るのが正解だ。


 それから、よく言われることだが、迷ったら、又は迷ったようだと思ったら、とにかく引き返すことだ。
 たとえ上り坂でも、戻りに要する時間は思ったより短い。
 











posted by 高尾評論 at 19:52| 東京 ☁| Comment(2) | 予防安全予防衛生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月07日

滑落現場を見た

 当人の個人情報にも関わるため、場所と日にちは特定しない。

 高尾評論のすぐ前を下っていた人が、滑落事故を起こした。
 夏山のごく一般的なコースでの出来事だ。
 
 中年男性がふたりで下山していた。
 滑落事故を起こした人は、後ろの人だ。
 その人は、最初からおっかなびっくり下っていた。
 登山道がほんの少し急な勾配になると、体が後傾となり、スピードが落ちる。
 前の人は、後ろの人の歩きを意識していないようで、勾配に関係なく、一定の速度でどんどん下って行く。
 その結果、後ろの人は、勾配が緩くなると、速度を上げ、何とか前の人に追いつこうとする。

 本当は、不慣れな人と一緒に山歩きをするときは、不慣れな人を先に歩かせ、その人のペースで歩くべきだ。
 しかし、実際に、慣れている人と慣れていない人の技量の差が大きい場合、慣れている人が先頭を切って歩き、適当な場所で慣れない人を待っているというケースがほとんどだ。
 慣れている人はペースを乱されて、いらいらするから先に行き、慣れていない人は自分の下手な歩き方を見られたくないから後ろを歩く。

 だが、これが山仲間のやる事かと言うと、大いに疑問だ。
 慣れている人は、この際ゆっくり歩いて慣れていない人の歩き方を観察し、ついでに自分の歩き方もチェックする。
 慣れていない人は、恥ずかしがらずに自分の歩き方の悪い所を指摘してもらい、修正すべきものは修正する。
 こうでもしないと、いつまでたってもお互いの距離は開くばかりだ。


 道の傾斜がやや急になり、少しカーブし、なおかつそれまで谷側に生えていた草がなくなる所に差し掛かる前のことだ。
 後ろを歩いていた人は、へっぴり腰になり、手の動きも止まった。
 その場所はまだ、傾斜が緩く、直線で道幅も広かった。
 だが、その数歩先の急で登山道が細くなっている所に備え、前もって怖がる準備をしていたのだ。
 
 ちょうど急な所に入ったその時、案の定、その中年の男性は、後ろにゆっくりと滑った。
 ここまでは、高尾評論でも想定内の出来事だった。

 中年男性の体は尻餅をついたまま、やや急になった道を滑り出した。
 高尾評論は、中年男性が手を付いてブレーキをかけるのだと思っていた。
 
 しかしその後、高尾評論の想定外の事が起きた。

 中年男性は、手を降ろしたまま体に密着し、体も伸ばしきったままだ。
 そして道を外れ、谷側に向かって、滑落し始めた。
 谷側といっても、普通の樹林帯で、大小の木や草が生えている。
 傾斜は45度もない。
 少し手を自由にさせていれば、いくらでも掴むものはある。
 中年男性の滑落するスピードはどんどん速くなる。
 中年男性は、体を硬直させたまま、斜面を滑り続けた。
 ちょうど、ウォータースライダーで滑っている姿勢そのものだった。

 幸いなことに、ヘヤピンカーブを描いて回ってきた登山道がその7〜8m下にあった。
 それまで前を歩いていた中年男性の通路をふさぐ形で、何とか止まることができた。

 止まってから数秒後、滑落した中年男性は、我に返り、初めて手を使って起き上がった。
 幸い見たところ、大きい怪我はなさそうだ。
「いやあ、油断しすぎた」
 滑落した人はこう弁解した。
「本当だよ。ちゃんと足元見て、注意しないと」
 前を歩いていた中年男性は、滑落時点を見ていないのに、こう言った。

 あれは断じて不注意ではない。
 明らかに怖がりすぎて後傾になって滑り、更に体が硬直して手が動かなかったためだ。
 そして、滑り始めてからも、体の硬直は取れず、運命に従って、ただただ滑落していったのだ。
 
 確かに足元をよく見て、1歩ずつ丁寧に歩くことは、安全上、大事なことだ。
 しかし、必要以上に怖がると、体のバランスを崩し、却って滑ったり、転倒することになる。
 さらに体が硬直していると、その後の動作も取れなくなる。
 
 怖がっている人に、怖がるなと言うのは酷かもしれない。
 しかし、恐怖が恐怖を呼ぶような悪循環は断ち切らなければならない。

 とにかく、基本姿勢を保つことだ。
 基本の基本は、どんな場合でも、骨盤から頭まで伸びる線を、地球の軸と1本化することだ。
 そのほかの事は、他のネットを見ても、本屋で立ち読みをしても、すぐにたくさん出てくるだろう。

 とは言え、いざその場に立つと、そんなことはすべて忘れてしまう。
 というか、そんな姿勢のことなんか、どうでも良くなってしまうこともある。

 しかし、基本姿勢は安全上、一番大事だ。
 1歩1歩、決して急がず、自分が納得した上で、丁寧に歩くことだ。
 自分で怖いと思ったら、まずは立ち止まる勇気を持つことだ。
 そして、自分の姿勢、周りの地形、障害物がどこにあるかを見極め、自分の進むルートを冷静に判断する勇気を持つことだ。
 
 高尾評論が今まで滑落現場を見たのはこの1件だけだ。
 滑落は皆このようにして起こるものではない。
 怖がることで滑落するのは、例外中の例外だったかもしれない。

 それでも、この報告が、山歩きの中で、何らかの安全につながって欲しいと思う。







posted by 高尾評論 at 19:49| 東京 ☁| Comment(0) | 予防安全予防衛生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月27日

18きっぷで那須

 那須火山帯の南部には、魅力的な火山が連なっている。
 南から日光、高原、那須、磐梯、安達太良、吾妻、蔵王と、それぞれが山域として独立しているが、この中で登山口までまともにバスが走っているのは日光と那須だけだ。

 日光は首都圏から最も近く、バスが頻繁に走っている。
 男体山、女峰山など、ガッツリ系の山が並ぶ。
 ただ、これらの山へは、JRよりも東武鉄道を利用した方が有利だ。
 運賃は安いし、乗り換えはないし、バスとの接続もいい。
 特に浅草発6時20分の快速は、登山ご用達列車とも言える。
 だから、日光に関して言えば、何もJRの青春18きっぷを使わなくても、四季を通して安い東武を使えば事は済む。


 次に交通の便がいいのが那須だ。
 那須岳は標高2000mに満たないが、活火山で樹林がないため、高山的な気分を満喫できる。
 いつも3アルプスを歩いている人でも、十分に満足できる山行になると思う。

 北関東の人にとっては人気の山で、シーズン中はかなり混む。
 人が多い割には、クマの目撃情報も多い山域だ。
 18キッパーは早朝の歩きはできないが、夕方は注意が必要だ。

 黒磯までは在来線と言えども非常に便が良く、ほぼ30分間隔で出ている。
 上野や新宿からだと、宇都宮乗り換えを含め、3時間弱で着くことができる。
 北アルプスのように前もってムーンライト信州の指定券を取っておく必要もなく、朝起きた時の天気予報と体調を見て、出掛ければよい。

 黒磯駅から那須ロープウエイのバスは1時間に1本は出ている。
 那須塩原駅が始発のバスもあるが、せっかく18きっぷを利用するのなら、黒磯駅までJRを使った方がいい。

 終点のロープウエイ駅で降り、ロープウエイの往復切符を買う。
 せっかく健脚が山へ登るのに、ロープウエイ利用、しかも往復とは何事だと思うかもしれない。
 確かに車道はもう少し上の峠の茶屋まで伸びており、ここから茶臼岳と朝日岳との鞍部の峰の茶屋まで登山道があるので、これを使えばロープウエイはいらない。
 しかし、往復ともロープウエイを使うことにより、茶臼岳山頂と無間地獄という那須火山ならではの魅力的な2箇所を歩くことができる。

 那須岳と言う峰はなく、いわゆる那須5峰とそれに続く峰々から成っている。
 この中で県外の普通の登山者が訪れて最も那須らしい範囲は、ロープウエイ山頂駅、牛ヶ首、隠居倉、熊見曽根(1900m峰)を結んだ長方形の中だろう。
 このおいしい範囲は、活火山那須の中心と言うべき範囲であり、木がほとんど育っていない、荒々しい地形の中を歩くことになる。

 しかし、広大な面積を持つ那須岳の中で、おいしい範囲は面積が狭く、高尾で鍛えた健脚にとって物足りない人も多いだろう。
 そこで、展望の良い那須岳最高峰の三本槍も登ることにし、以下のコースを推薦する。

 ロープウエイ山頂駅→茶臼岳→峰の茶屋→朝日の肩→朝日岳→朝日の肩→三本槍岳→朝日の肩→峰の茶屋→牛ヶ首→ロープウエイ山頂駅

 いわゆる難所としては、朝日の肩の少し下に鎖場があるが、雨で濡れていない時に落ち着いて通れば問題ないだろう。
 むしろ問題は、初心者がアリさんの行列状態で登る山域なので、人工落石が多いことだ。
 慎重な人はヘルメットを持って行けばよいが、電車利用ならそれも面倒なことは確かだ。


 ロープウエイを降りると、そこはもう茶臼岳の8合目で、木が1本も生えていない岩ばかりの山腹だ。
 ここでまず必要なのは、トイレに行く事だ。
 これからの行程には、他には一切トイレはない。
 それと、もうひとつ必要な事は、下りのロープウエイ最終時刻を確認することだ。

 いきなり茶臼岳に向かう急斜面を歩く。
 一般観光客も同じ道を歩くことになる。
 ここでも言えることだが、山では、
 「歩く人の多い道=歩きやすい道」
 ではないのだ。
 特に、観光客は、ペース配分の仕方が分からないので、平地と同じペースで歩いてしまう。
 その結果、山頂駅からわずか200m先の茶臼岳、牛ヶ首の分岐あたりで、もう体力を使い果たし、登れなくなってしまう人が続出する。
 那須ロープウエイの上は、一般観光客にとって、厳しい環境にあるのだ。
 われわれ登山者は、持ち物の確認をし、準備運動をした上で、観光客と張り合うことなく、自分のペースで登りたい。

 茶臼岳の頂上に近づくにつれ、岩が大きくなり傾斜も急になる。
 ただ、それも長くなく、茶臼岳の火口の一角に立つことになる。
 まずは茶臼岳の山頂を目指す。
 日光連山はもちろん、筑波、八溝、尾瀬の燧、至仏など、アルプスでは見えない山を始め、遠くには富士山までが良く見える所だ。

 一般観光客でも元気な人は、この山頂までは来ている。
 街歩きの靴とショルダーバッグでここまで登った人は偉い。
 これで下りもスムーズに降りられたのなら、山歩きの才能がある。
 今度はまともな格好をして、ぜひまた山へ登ってほしい。

 中には小学生の団体も登っている。
 先生が見ていないと思うと、山頂の大きな岩の陰の崖っぷちでかくれんぼをしている。

 続いて、お鉢を時計回りに歩く。
 お鉢自体は平坦なものだが、北西側の崖を覗き込むと、これから行く朝日岳、三本槍の真下に、峰の茶屋の避難小屋や無間地獄の蒸気が見える。
 頂上の喧騒を離れ、ゆっくり食事をとるにはいいところだ。

 お鉢を一周し、峰の茶屋へと下って行く。
 ガレ場を下ると、平坦な土地に着く。
 小さい石が整然と並行して置かれている。
「やっぱり自然の力はすごいものだ」
 そう感じる人は、人がいい。
 これは実は人工的なものなのだ。
 昭和20年代から40年代にかけて、ここは硫黄鉱山だったのだ。
 石のトンネルを造り、その中に噴気を通すことで、昇華した硫黄を取るための跡なのだ。

 牛ヶ首からの道と合流すると、すぐに峰の茶屋だ。
 峰の茶屋は那須主脈の最低地点で、なおかつ湯本と三斗小屋を結ぶ道との十字路になって、風の強い所だ。
 峠の見本と言うべきところだろう。

 この先難路、という標識がある。
 目の前に立ちはだかる朝日岳は、にせ穂高と異名がある厳しい表情をしている。

 道は最初、尾根の右側を巻き、続いて左側を巻く。
 道は厳しさを増してくる。
 やがて鎖がついた階段を登るようになるが、余程の時以外、使う必要はない。
 階段と鎖がいやな人は右側のガレ場を通ればいいのだが、こちらは落石注意だ。

 ストックを持っている人は、次の鎖場の前でザックにしまうことにしよう。
 こちらは尾根上に作られた階段を登ることになり、先ほどよりは少し手ごわい。
 といっても、よほど岩が濡れている時以外は、丁寧に歩けば問題ない。
 小さいピークを越えて少し下ると、この鎖場は終わる。

 次が鎖場のトラバースだ。
 左の谷が切れている一枚岩を越えることになる。
 こちらも丁寧に歩けば、歩くこと自体は問題ない。
 一番の問題がすれ違いだ。
 見通しが悪い所もあるので、渡る前に声を掛けておく方がいい。
 それでも、初心者が多い山なので、こちらが鎖場を渡っている最中なのに突っ込んでくるお調子者もいる。
 気が強い人なら追い返せばいいし、気が弱い人なら自分から戻ろう。
 それもいやなら、足場のしっかりしたところを選んでぴったりと岩にしがみつき、谷側を開けておくことだ。
 お調子者は谷側で身を危険にさらしながら通るわけだが、仕方ないだろう。

 短い2箇所のトラバースで鎖場は終わる。
 しかし、ここで休んだり、ストックを出したりしてはいけない。
 上を見れば分かるように、この場所は落石が非常に多い所だ。
 ほとんどが人工落石なので、人が多い時は特に注意しよう。

 ひと登りで朝日の肩に着き、ちょっとした難所は終わる。
 朝日岳は目と鼻の先だ。

 朝日の肩でザックを降ろし、空身で朝日岳を往復する人が多い。
 だが、高尾評論は、荷物を置いて山頂を往復するのは、どんな場合でも反対だ。
 ザックの中には、雨具や飲み物など、万一の時に大事なものが入っている訳で、一時的とはいえ、それを置いていくのは賛成できない。
 荷物が重くて仕方ないというのなら、最初からザックの中身を軽くしておくべきなのだ。

 朝日岳では、今まで登ってきた茶臼岳や関東平野が良く見える。
 それと、地形的に斜面の反響が起こりやすいせいか、那須ロープウエイの案内が良く聞こえる。

 山頂は狭く、混雑している時は長居しにくい場所だ。
 少し下った尾根上で、見晴らしが良く、休憩に向いている場所があるが、よく見るとハイマツの陰にティッシュがへばりついている。

 朝日の肩に戻り、熊見曽根に向かって進む。
 左側はバッサリ切れ落ちた谷だが、道がしっかりしているので特に問題はない。

 熊見曽根直下で巻き道があるが、ここは頂上まで登っておこう。
 頂上では、隠居倉からの道と合流し、会津方面が開ける。

 わずかに下って、通称1900m峰に向かって登り始める。
 右に見える、ちょこっとした突起が朝日岳だ。
 1900m峰よりも低く、山頂とは言えないほどの可愛い出っ張りで、峰の茶屋から見たのと大違いだ。

 1900m峰付近は平坦で、ケルンがいくつか積み上げられている。
 天気がいい日だと、会津盆地の右側、磐梯山の真下のかなり高い位置に猪苗代湖が見える。
 座る場所も多いので、混雑時はこのコースの中で、最も休憩に適している場所だと思う。
 時間がなくなってきたら、三本槍をキャンセルし、ここで引き返しても後悔はないだろう。

 目指す三本槍は、左側の山だ。
 一度右の山の頂上近くまで登り、鞍部まで下って更に登り返す必要がある。

 1900m峰から清水平までの下りは、このコースの中で一番嫌な所だろう。
 木の階段が劣化し、魚を食べた後の骨の残骸のように、丸太の一部だけがボロボロになって残っている。
 近々、ここも整備し直すだろうが、それまでは本当に歩きにくい道だ。

 清水平に出てほっとする。
 ここは湿原と言えば湿原だが、草がほとんど生えていなく、尾瀬のような雰囲気はない。
 その中の木道を渡る。

 この先は、火山的な雰囲気はなくなり、大きく溝の掘られた道を歩く。
 ちょっとしたアップダウンの後、三本槍への登りが始まる。
 こちらは最近整備された丸太の階段を登ることになる。
 ごく普通の山道なので、基本に忠実に小股で歩けば、山頂にはほどなく着く。

 山頂からは特に南会津の盆地が良く見える。
 今まで来た尾根は、この少し先でふたつに分かれ、片方が朝日岳、甲子山、もう片方が流石山、三倉山に達する。
 目の前のかっこいい山は、三倉山だ。
 ここよりも標高が高いように見えるが、実際にはそんなことはない。
 三本槍の山頂もラッシュ時はかなり混むところだ。
 山頂の西側に踏み跡があり、休憩できそうなところもあるが、ここもトイレ場となっている。
 まだ時間に余裕があり、健脚に自信があれば、大峠方面に15分くらい下った場所で鏡ケ沼を見ながら食事をするのがいいかもしれない。

 さて、ここからは、また1900m峰、朝日の肩を越えて、峰の茶屋まで戻る。
 途中、北温泉分岐があるが、これまた長いルートになる。
 ただ、天候が急激に悪化したときや体調不良の際は、こちらを選び、マウントジーンズのゴンドラが動いていればこれに乗り、麓でタクシーを呼ぶ方法がある。

 朝日の肩で、ストックを持っている人は、ザックにしまうことにしよう。
 ここからの下りは、登り以上に丁寧に歩くようにしよう。
 道を外れると、落石をする確率が高くなる。

 峰の茶屋からの下山路は、避難小屋を左折し、明礬沢に沿って下って行く。
 風の谷のナウシカで、最初にナウシカがメーベで滑空するような場所だ。
 最短でロープウエイ山麓駅に着くことができる。
 片道券が余ることになるが、手数料200円を払えば残りは戻ってくる。
 ここから牛ヶ首を通り、ロープウエイ山上駅までは1時間少々を見る必要がある。
 通常、ロープウエイの最終は4時24分なので、3時を過ぎていたら、無間地獄はあきらめよう。

 しかし、まだ時間と体力に余裕があれば、是非無間地獄まで足を延ばしてほしい。
 この場所が、那須の中で、一番活火山らしい場所だからだ。

 峰の茶屋からほんの少し茶臼岳に登ったところで、牛ヶ首方面の道を選ぶ。
 ここから牛ヶ首までは、ほとんど平坦で幅広の道が続く。

 先ほどからジェット機のような音がしないだろうか。
 確かにここは、羽田から北海道に行く定期便の航空路になっている。
 しかし、はるか上空を飛んでいるので、こんなに近く聞こえないはずだ。

 この音の正体は、無間地獄からの蒸気の音なのだ。
 何度も茶臼岳の襞を越えていくと、黄色い硫黄の中から、勢いよく上記が登っているのが見えてくる。
 この辺が無間地獄と言われるところだ。
 よく見ると、ここにも硫黄鉱山の遺構の跡がある。
 眼下に姥ケ原のひょうたん池を見ながら、わずかに登ると、牛ヶ首に着く。

 牛ヶ首で方向が変わり、朝茶臼岳に登ったのと同じ景色が眼下に見えるようになる。
 先ほどよりはアップダウンがあるが、それでも快適な道には変わりない。
 茶臼岳との合流点を過ぎると、すぐにロープウエイの山上駅だ。


 なお、このコースで物足りない人、ロープウエイ代がもったいない人は、
 ロープウエイ下→峠の茶屋→峰の茶屋→朝日岳→三本槍→峰の茶屋→茶臼岳→ロープウエイ上→牛ヶ首→峰の茶屋→峠の茶屋→ロープウエイ下
 のコースを推薦する。
 これだけ歩いても、高尾山口から陣馬山までの往復と同じかやや短時間でこなせるだろう。
 ロープウエイ下から峠の茶屋までは、車道の横に歩道専用の道がある。








posted by 高尾評論 at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 青春18きっぷ利用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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