2015年07月07日

噴火に備えた富士登山

日本列島の火山活動が活発化している現在、富士山の噴火警戒レベルは1のままだが、今まで以上に心配している人も多いだろう。
近所の箱根山ではレベルが3になったし、去年の大災害をもたらした御嶽山はレベル1のままで噴火した。
富士山の場合、噴火の可能性がある火口は頂上だけでなく、麓にも分散しているため、危険個所を特定するのは難しい。
最近内閣府が作った富士山火山防災マップによると、5合目以上はすべて火砕流、噴石が飛ぶ最も危険な区域に入っている。

そんな富士山に敢えて登りたい人にとって、噴火で遭難するリスクを極力少なくするのにはどうすればよいか。

一番の予防策は、富士山中の滞在時間を極力短くすること


山の本には、落石の危険性がある個所は速やかに通過するように書いてある。
火山の場合も同じだ。
噴火に遭うリスクは、山中の滞在時間と比例する。
火山は、登山中すべて、もっと言うと、麓を車やバスで移動している時も噴火の危険にさらされている。
富士山の場合、五合目に着いたなら、高所順応に要する時間は仕方ないが、その後は無駄な時間をとらず、さっさと歩き、無駄な休憩時間も取らないことだ。
と言っても息が切れるほど急いで歩く必要はない。
大事なのは、歩き方の基本を大切にし、体力配分を考え、トータルの所要時間を短くすることだ。


逃げ足を速くすること

火砕流や噴石に当たるか当たらないかは運に左右されることも多いだろう。
しかし、噴火が起こる気配を感じたら、とにかく早く下山するか、近くの山小屋に避難するしかない。
多少怪我のリスクが上がっても、急ぐしかない。
急いで下ることはタブー視されているが、普段からある程度の速度で下れるようにしておくことは、噴火のほか、落雷や日没を避けるためにも必要だと思う。

夜間登山は止めること

夜では火砕流が向かってきているのか、噴石が飛んでいるのかも分からない。
いくら高性能のライトを持っていても、行き先が全部見えるわけではない。
特に富士山の夜間登山は、自分で行き先を照らすというより、前の人にただついていくという感じだ。
突然噴火が起きれば、どこを通って逃げれば分からなくなり、大パニックを起こす可能性はある。

夜は山小屋で過ごすこと

噴火が起きた場合、山小屋が比較的安全なことは言うまでもない。
夜はむやみに歩き回らず、山小屋でじっとしていることだ。
テントも危ない。
もっとも富士山の5合目以上はテント禁止だ。


ガスがかかりそうな時は登山を止めること

夜ほどではないが、危険物が迫っていることも、自分の行き先も分からなくなる。


結論として、純粋日帰りが一番安全

夏山シーズンは登山者のために富士山で働く人はとても多い。
その人たちの生活を脅かすような提案はしたくないのだが、敢えて結論を述べさせてもらう。

噴火によるリスクを最小限にするためには、純粋日帰りが最も望ましい。
つまり、日が昇ってから登山を開始し、その日の日没までに下山することだ。

ただ、これは噴火だけから見た狭義の安全であり、高山病や転倒によるリスクは考えていない。



次に安全なのは、山小屋完全1泊

 純粋日帰りができない人は、日没から日の出まで、山小屋の中にいること。
 例え眠れなくても、ご来光が見たくても、暗いうちは山小屋の中にいるようにしよう。

一番危ないのが夜行登山

 せっかく山小屋を利用しても、暗いうちからご来光を仰ぎに山小屋を出たのでは意味がない。
 ただ、これだけ噴火について話題になっているのに、富士登山ツアーの大部分が夜行登山を決行している。


道具の話
 富士山の安全と言うと、まず道具の話を出す事が多い。
 こんなことよりも、山への滞在時間を短くすることの方がずっと大切だと思うが、高尾評論もヘルメット、ゴーグル、マスクは持参する。

ヘルメット
 山用の軽く、蒸れないやつがあるので、これがおすすめだ。
 よくザックにぶら下げている人がいるが、せっかく持っているのに使わないのはもったいない。
 富士山は常に落石の危険が伴う。
 登山開始から下山までの間、休憩している間も含め、常に被るようにしたい。
 
ゴーグル
 スキー、スノボー用のものでいい。
 普段は紫外線防止としてサングラス代わりにかけたら良い。
防塵用としてもいい。
 高尾評論の場合、登りは汗で曇ってしまうので、お鉢めぐりと下り専用で使っている。

マスク
 須走口か御殿場口に降りる人は、防塵用で持っていた方がいいだろう。
 せっかく持ってきたのなら、直ぐに出せるところに置いておこう。






posted by 高尾評論 at 20:14| 東京 ☁| Comment(0) | 富士山と高尾山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月05日

世界遺産登録後の富士登山

世界遺産になったことで、富士登山客がどのくらい増えるかどうか、高尾評論には分からない。
 ただ、今まで、時間とお金とほんのわずかな体力があれば富士山に登れると思っている人にとっては、敷居が高くなった事だけは確かだ。
 今シーズンから入山料を試行的に徴収するそうだし、将来は入山規制も考えているようだ。

 そんな中で、なるべく環境にも身体にも負担を掛けず、安全に登山するにはどうしたらいいか。ある程度のリスクは背負って登るのだから、山行の最中はなるべく苦痛なく、楽しく、いい思い出の残るものにしたい。

1.夜行登山を止める
 山は夜登るものではない。
 しかし、富士山登山者の過半数が夜行登山をしている現実がある。

 懐中電灯で足元だけを照らしていると、分岐点が分からず、大きく道を間違える恐れがある。
 今度は遠くばかりを照らすと、足元の浮石に気づかず、つまずいて捻挫をしたり、その石を落したりする。
 また、落石があっても、どこから落ちてくるのか分からず、逃げそこなうこともある。
 大勢の人が登っているからといって安心してはいけない。
 人が多いほど、道迷いの確率は下がるかも知れないが、人工落石を受ける確率は上がる。

 それに、夜の富士山は、真夏でも恐ろしく寒い。
 止まると寒さが身に染みるので、無理をして歩き続けることもある。

 夜は山小屋に泊まり、日の出まで小屋に留まることだ。
 それが嫌なら、純粋日帰り登山をするしかない。


2.天候、体調の悪い日は止める
 山の鉄則だ。
 特に富士山は、眺望が売り物だから、霧の所を延々と歩く意味はない。
 高山の雨の強さ、特に雷の怖さは、受けてみないと分からないだろう。
 富士山の天気で注意するのは、天気以上に風だ。
 強風注意報が出ている時、登り道で無風状態でも、頂上に上がると急に風が吹き付けることがある。
 いくら快晴でも、富士登山のハイライト、お鉢巡りをすることはできなくなる。
 
 悪天候、悪体調のリスクを最小限にするには、出発直前まで、行くべきかやめるべきかの最終判断を保留しておくことだ。
 5合目に着いても、歩きだした後でも、天気と体調が悪ければ、すぐに引き返すべきだ。

 その点は、高尾あたりに登るのと同じ感覚でいい。
 ただ、荷造りだけは、前日までに終わらせておきたい。
 ドタキャンした後、気まずくなるような相手なら、最初から一緒に登る計画を立てないことだ。

 今後、富士山の登山客数規制で、登山日を予め登録させ、その人たちだけを登らせる案がある。
 そうなったら高尾評論は、富士登山を躊躇なく放棄する。
 何日も前に予定日を決められ、変更ができないようなものは、登山とは言えない。
 登山とは、その瞬間の山の状態、天候、体調を自分で感じ、自分の判断で最適な計画を立て、山に登ってからも臨機応変に変えられるものだと、高尾評論は思っている。


3.頂上でのご来光をあきらめる
 どうしても頂上でのご来光を拝むのなら、頂上の山小屋に泊まるしかない。
 ただ、吉田口、須走口では、ほとんどの山小屋からご来光を拝める。
 5合目で迎えるご来光だって立派なものだ。
 それに富士山の魅力はご来光だけではない。


4.純粋日帰りを考える
 これを言うと、怒られそうだが、敢えて言うことにする。
 富士山中の滞在時間が短ければ、登山者ひとり当たりの環境への負担は少ないのは確かだ。
 滞在時間が短ければ、排泄物も少なくて済む。
 登山道をちょっと外れて休憩すれば、山は壊れるので、休憩箇所も少ないほど良い。
 既に山小屋は満杯の状態だし、増設は簡単にはできないだろうから、宿泊は初心者や高齢者に譲る。

 ただ体力と技術について、確固たる実績や裏付けがないと、純粋日帰りはできないことは確かだ。
 
 
5.お鉢巡りをする
 吉田、須走、御殿場、富士宮の4登山道を上がった場所は、いずれも「頂上」という名前がついている。
 しかしこの「頂上」は、外輪山の一角にすぎない。
 ここまでの道中はいわば、富士登山の前座であり、外輪山を一周するお鉢巡りこそ、富士登山の真打だと、高尾評論は思う。
 天気のいい日、お鉢巡りをすると、伊豆、三浦、房総半島から、日光、上信越、3アルプスまですべて見ることができる。
 尾根自体のスケールは、北アルプスや南アルプスの主稜に負けるが、展望、特に遠望に関しては、日本一のスケールを誇るスカイラインだと思う。

 ただ、登山者のほとんどは、各登山口の頂上で引き返している。
 時間がないのか、体力が持たなかったのか分からないが、実にもったいないことだ。
 せっかく富士登山をするのなら、ぜひお鉢巡りを計画に入れ、その分時間と体力とに余裕を持って登ってほしい。

 お鉢巡りのまわり方としては、反時計回りが楽だろう。
 一番の急勾配、剣ヶ峰から富士宮口頂上までが下りとして使える。
 ここの下りが怖いという人もいるが、下りの基本を押さえていれば、なんでもない勾配だ。
 お鉢の北西側、つまり吉田口、須走口頂上から剣ヶ峰までは比較的空いていて、ここで大休止や昼食を取ればいいと思う。


6.剣ヶ峰登頂をあきらめる
 剣ヶ峰は富士山の中の最高峰、日本最高地点だ。
 ここに登らず何とすると言うことで、最近は写真撮影待ちの人で大混雑だ。
 剣ヶ峰は、外輪山の一角なのだが、お鉢巡りの道からほんのちょっとずれており、シーズン中はその分岐点からずらっと並んでいる。
 日本最高地点に立ちたい気持ちは分かるが、貴重な登山時間の何分の一かをここで費やし、証拠写真を撮る意味はどのくらいあるのか。
 展望を楽しむなら、お鉢巡りを一周することで十分目的は達せられたはずだ。
 剣ヶ峰を出発すれば、あとは下りだけだが、その下りは標高差が千数百mある。
 途中で夕立や日没に会わないよう、適当に見切りをつけることにしよう。
 剣ヶ峰登頂は、一生に一度でいいのではないか。


7.何か嫌な事があれば、すぐに引き返す 
 富士山は天候、体調の急変が起きやすい。
 特に体調は、高山病と言う予期せぬ事態が発生することがある。
 これは、どんなに体力がある人でも、他の山をたくさん歩いた人でも、起き得るもので、努力や根性ではどうにもならない。
 登ってみたが、何となく気が乗らないということもある。
 富士山との相性が悪いのかもしれない。
 そんな時も含め、嫌な事がひとつでもあれば、その先の登山を中止するに限る。
 富士宮口を除き、ほとんどが登山道と下山道が別になっているが、登山道を降りていけない法律はない。
 登っている人には迷惑だろうが、遠慮しながら登山道を下山することにしよう。


8.根性登山はしない
 登山とはとにかく耐えることだと思っていないだろうか。
 確かに最小限の忍耐は必要だが、たとえ富士登山とは言え、家の周りを散歩するのと同じくらいの負荷で登るのが理想だと、高尾評論は思う。
 本番の富士登山で、そのように歩けるよう、普段からまともな登り方、下り方ができるように努力することは大いに結構なことだ。
 登り下りの基礎ができていないのに、富士山に登るときになって初めてがむしゃらにがんばるのは、泥縄と言われても仕方ない。
 苦しいだけでなく、事故も誘発しやすいことは明白だ。
 その場は大きな事故なしに帰宅できたとしても、その後何日間も寝込んだり、足をひきずったりしていては、いい登山だったとは言えない。


9.まじめに登山する
 前に述べたことと矛盾するようだが、決してそうではない。
 登山と言う行為自体、スポーツの領域に入ることは異論ないだろう。
 家の周囲の散歩が練習、高尾登山が練習試合、富士登山は本番試合に相当する。
 球技でも格闘技でもレースでも、本番で多少冗談を言うくらいならともかく、絶えずへらへらしながら試合に臨んだら、相手に失礼だし、結局のところ、自分でも面白くなくなるだろう。

 富士山は、他の山と比べ、自由度の少ない登山になることを予め知っておいてほしい。
 登山道を少しでも外れると、落石を引き起こすので、登山道、下山道は厳格に決められており、休憩場所もかなり制限されている。
 その上、登山道の途中で不用意に止まれば渋滞を引き起こすし、強引に追い越しを掛ければ転倒も起きるだろう。
 シーズン中、富士登山をするということは、家畜のように場所とペースを管理されて移動せざるを得ないのだ。
 今後、この傾向はますます強くなるだろう。


10.それでも登り下りが苦手な人は、富士登山はしない
 それを言っちゃおしまいかとも思うが、事実だから言っておいたほうがいいだろう。
 山歩きは、数あるスポーツの中でも一番原始的かつ根底的なスポーツだ。
 特別に高齢とか、深刻な持病や障害のある人を除けば、山の登り方、下り方など、そんなに難しいものではない。
 富士山も一般コースを歩いている分には、難所と言うところが1箇所もない。

 それでも、登り方のペースがどうにも掴めなく、歩いている時間よりも休んでいる時間の方がはるかに多ければどうなるだろう。
 天気が良ければ、1合目ごとにある山小屋が、手が届くくらい近くに見える。
 だがいつまでたってもそこに着かないもどかしさは、その当人と同行者しか分からないだろう。

 下りもそうだ。
 急斜面と呼べるところは1箇所もなく、肩の力を抜いて、膝のクッションを使い、楽に下ればいいのだが、それができないと悲惨だ。
 何しろ、単調な道を標高差で千数百mを下るのだ。
 富士山の下りで恐怖症が発生し、カニさん歩きになってしまったら、そのカニさん歩きで1万数千歩を下らなくてはならない。
 特に下山道は、ほとんど山小屋も茶屋もなく、荒涼とした斜面が延々と続き、ほっとする場所がないのだ。


11.できれば、須走口から登る
 須走口5合目の標高は1970mだ。
 富士宮口や吉田口に比べると標高差で300〜400mほど余分に登ることになる。
 しかし、実際には5合目付近は比較的なだらかで、樹林帯を歩くため、思ったほどはきつくはないし、実質的な所要時間もそう変わらない。
 吉田口や富士宮口よりも空いているので、自分のペースで登れるし、登山道の負担は少ないはずだ。
 ただ、8合目で吉田口と合流し、そこから先は猛烈な混雑となる。


12.できれば、御殿場口に下る
 御殿場口5合目の標高は1440mで、さすがに登りには勧められない。
 しかし、下りでは富士山の大きさをたっぷり感じられるし、大砂走りを下る豪快さは格別だ。
 下りはここ専用の道なので、渋滞とはほぼ無縁だ。
 途中であまりにも長いと思った人は、途中で宝永山の麓を通って、富士宮口6合目に出る事ができる。
 このコースも宝永火口が見えて、なかなかいい。

 富士山頂を目指さない渋いコースとしては、富士宮口から登り、6合目でこの宝永火口を通り、御殿場口下山コースの大砂走りを5合目まで下る。
 ほとんどの人にとって、大混雑の富士山頂よりも、こちらを歩く方が、満足度が高いような気がする。


13.富士山だけが山じゃない
 これから何かと敷居が高くなる富士山にいつまでもしがみついているのもいかがなものか。
 富士山は日本にある山の中で、ずば抜けて大きい。
 お鉢巡りをしないのなら、富士山を歩く時間のすべてを、巨大な斜面の登り下りに費やしているに過ぎない。
 良く言えばスケールが大きい、悪く言えば大味、単調な山歩きだ。
 渋滞と極寒と高山病の中、それだけの山歩きに10時間以上を費やす必要があるかどうか、高尾評論は常に疑問を感じている。
「人生の記念に、冥途の土産に」
 と言われれば返す言葉はない。
 しかし、他の山域なら、10時間も歩けば富士山よりもずっと変化のある山歩きができることは確かだ。

 富士山を本当に楽しめるのは、快眠、快便ができる朝型の人で、登り、お鉢巡り、下りを入れて、余裕で日帰りできる人に限られるだろう。

 首都圏の人で、単に山を歩きたい初心者なら、ほとんどの人は高尾山で十分だ。
 尾根道、谷間の道、舗装路など、登山道はバラエティーに富み、展望もまあまあ、人がほとんど歩いていない道だってあるし、1日中歩いてもたどり着かないほどのロングコースもある。
 ただ、絶対的標高が低いので、夏の暑さだけはどうにもならない。

 楽をして高い山に登りたいのなら、乗鞍岳に行けばいい。

 富士山のような形の整った独立峰の火山へ登りたいのなら、浅間山を推薦する。
 浅間山は、電車の便は悪いが、車なら渋滞なしで都心から3時間以内で登山口まで着く。
 富士山麓の駐車場からシャトルバスに乗り換えて5合目に行くのと同じくらいだ。
 富士山と同じように知名度は抜群、遠くからもよく分かる山だ。
 途中からの景色は、富士山同様、何も遮るものはなく、抜群の展望を誇る。

 ただ、この浅間山、どういう訳か登山者が少ない。
 不思議な事だ。

 今、浅間山は火山活動が収まっている時期で、中央火口丘のすぐそばの前掛山まで登山が許可されている。
 時期限定の山なのだ。

 高尾評論のお勧めコースは、
 車坂峠→トーミの頭→黒斑山→蛇骨岳→J-バンド→賽の河原→前掛山→草すべり→トーミの頭→車坂峠
 の周回コースだ。
 前半の第2外輪山縦走路から見る浅間山本山は、三つ峠から富士山を望むような景色であり、後半の前掛山からは、富士山頂からの眺望に匹敵する風景が待っている。








posted by 高尾評論 at 20:50| 東京 ☀| Comment(0) | 富士山と高尾山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月02日

富士山弾丸登山

 富士山の弾丸登山が批判されている。
 弾丸登山とは、宵のうちに五合目に着き、夜を徹して登る。
 山頂でご来光を仰ぎ、そのまま下山するというものだ。

 このような徹夜登山に対しては、高尾評論も反対だ。
 だいたい、どんな登山形態でも、徹夜登山と言うのはあり得ない。
 夜、山を歩くというのは、体調の問題だけでなく、道に迷ったり、落石を誘発したり、落石に気づかなかったりして、とにかく危ないのだ。

 山小屋での1泊パターン
 富士登山で一番多いパターンは、朝、自宅を出発し、昼前に五合目に着くプランだ。
 五合目で昼食を食べてから登山を開始し、夕方、8合目あたりの山小屋に着く。
 それから夕食、仮眠を取り、夜中の1時くらいに起床し、山頂でご来光を仰ぐ。
 
 しかし、これが本当に安全で健康的な富士登山だろうか。

 バスや車を降りたら、すぐに歩き出さず、五合目で昼食をとるのは、高度順応を兼ねるので、いいことだ。
 しかし、落雷が多い夕方に、8合目付近を歩くことになる。
 富士山は雷を避けるところがなく、どこに落ちてもおかしくない。

 さて、無事8合目の小屋に到着したら、寝室に何とか自分の体を入れるだけのスペースを確保し、普段の休日の昼食よりも少しだけ遅い時間帯に夕食を無理やり食べることになる。
 超満員の部屋でぐっすり眠れることができたあなたは、大物だ。
 ほとんどの人が、空気が薄く二酸化炭素の割合だけが多い山小屋で、眠ったか眠らないか分からないまま、長い時間が過ぎていく。

 やっと眠れたかなと思う午前1時、起床だ。
 普段ならそろそろ寝ようとする時刻に起き出し、更に活動しなければならない。

 山小屋を出ると、すごい寒さだ。
 この中を山頂まで歩かなくてはならない。
 当然夜行登山になるため、道迷い、落石のリスクも高い。

 頂上に近づくほど、歩くペースは落ち、渋滞が始まる。
 トップシーズンは午前1時に8合目を出ても、渋滞にはまり、ご来光までに頂上に着かないことがほとんどだ。

 頂上をあきらめ、ご来光に良さそうな所を選んで場所取りをする。
 場所取りをしてから、日の出までは猛烈な寒さに耐えることになる。

 何とかご来光を仰ぎ、再び頂上に向けての出発だ。
 と行きたいのだが、みんな一斉に立ち上がり、歩き始めるので、今まで以上の渋滞で、どうにも進まない。

 やっとの思いで頂上にたどり着いた。
 しかし、ここが本当の富士山頂ではない。
 標高3776mの日本最高地点は剣ヶ峰といい、吉田口や須走口から行くと、ちょうど反対側になる。

 火口を中心に、外輪山を1周するコースは、富士山のハイライトとも言えるが、もうその体力は残っていない。
 寒さと疲労で意識が朦朧とした状態で下山することになる。
 富士山の一般的下山路で断崖絶壁はないが、不注意で浮石に乗ってのねん挫などは多い。

純粋日帰りという選択

 高尾評論の富士登山の提案は、純粋日帰りだ。
 朝、日が昇ってから活動を開始し、日没前に下山するというものだ。
 こんなことを述べると、弾丸登山以上の無謀登山だとお叱りを受けるかもしれない。

 しかし、実際に歩いてみると、弾丸と言うよりも紙鉄砲や水鉄砲以下の速度だ。
 当然、走る必要は一切ないし、速足を強いられることもない。
 ゆっくりゆっくり歩いても、無駄な休憩さえしなければ、十分可能だ。
 5合目では準備体操と荷物チェックを兼ねて30分程度の高所順応をする時間もあるし、富士登山のハイライト、お鉢巡りもできる。

1秒で10pの標高を稼げば、純粋日帰りが可能

 単純な計算をすれば分かる。
 1秒で10p
=1分で6m
=1時間で360m
 つまり、
 富士宮口(標高差1350m)は3時間45分
 吉田口(標高差1500m)は4時間10分
 須走口(標高差1800m)は5時間
 で登りきることができる。

 1秒で10p登るとはどういうことだろうか。
 普段、我々が使っている階段の段差は17〜18p程度だ。
 その階段を1段に1.7〜1.8秒以上かけて登るというものだ。
 実際の階段をこのペースで登ったら、あまりにも遅く、自分はいらいらするし、周囲からは奇異の目で見られるに違いない。

 もう少し、実用的に考えてみる。
 だいたい、人が真面目に歩いている時の歩数は1分間当たり100〜120歩だ。
 1歩当たりの段差は5〜6pになる。
 平坦な場所も少しはあるし、休憩時間もある程度取りたいから、段差を8pくらいにする。
 1歩で段差8pを登るということは、1歩で30〜35p程度、つまり山靴を履いた自分の足ひとつ分くらいを出す。
 だいたい、普段歩く歩幅の半分弱だ。
 この歩幅を保ち、平地と同じ1分間当たり100〜120歩のペースで、水分、養分補給や着るものの調整、トイレ以外、なるべく休憩を取らずに進めば、日が昇ってから5合目を出ても、余裕を持って、午前中に頂上に立つことができる。
 
 ただ、吉田口のように、明確な階段が造ってある所は、段差8pを自分で区切りながら登ることはできない。
 このような場所は、階段1段を2,3歩かけて登ることだ。

 1秒で10p登る時の相対的スピードはどのくらいだろうか。
 まず、5合目の登山開始直後は、ほぼすべての人に抜かされる。
 6合目付近になって、早くも脱落しそうな人1割くらいは抜くことができるが、まだ9割の人に抜かされる。
 7合目になると、本格的な疲れが出る人がでてくるが、それでも、抜かされる割合は8割程度ある。
 8合目で高山病の影響が出るので、抜かされる割合は7割程度になる。
 9合目以上では、多くの人が疲労の頂点に達する。
 それでも抜く人と抜かされる人の割合はほぼ同じくらいだ。

 この歩き方で、多少の休憩を入れ、4時間弱から5時間で頂上に立つことができるのだ。

 7月1日、各放送局は、世界遺産登録後初の山開きの様子を報道した。
 まだ30代と思われる屈強のアナウンサーが、思い切り足を振り上げながら登っていた。
 そして、息絶え絶えになって、
「富士山は余裕を持って登るように、弾丸登山は決してしないように」
と訴えていた。
 
 悪いのは、山小屋に宿泊せずに登ることではなく、弾丸のようにがむしゃらに登ることだ。
 自分の体力を考えず、空気の薄い高山でいつもの階段を登る調子で歩いていると、心拍数は1分当たり軽く150を超えているだろう。
 普段運動をしている人なら別だが、何もしていない人がこの状態で富士山に登ると、効率が悪いばかりか、体にも悪いことは目に見えている。

 では、誰でも1秒10pのペースで5合目から頂上まで登れるのか。
 こればかりは何とも言えない。
 しかし、推測はできる。
 高尾山に登ってみればよい。
 清滝のケーブル駅脇から稲荷山尾根を通り、休憩なしで高尾山頂まで、1時間5分で歩くペースが1秒10pのペースだ。
 もう少し短距離なら、清滝から稲荷山展望台まで30分だ。
 素直で勘のいい人なら、一度登れば要領はつかめるだろう。

 ただ、富士山には高山病と言う問題があり、これだけは低山では見当がつかない。
















 
posted by 高尾評論 at 20:30| 東京 ☀| Comment(0) | 富士山と高尾山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月05日

健脚高尾的富士登山  ―須走口から電車日帰り―

 年間30万人もの富士登山者の中で、体調万全な状態で登る人は、どのくらいいるだろう。

 睡眠時間ひとつとっても、十分に足りている人は1割もいないのではないか。

 一番多いパターンは、5合目を昼ごろ出発し、7合目か8合目の山小屋で一泊する。
そして夜中の1時か2時に山小屋を出て、頂上でのご来光を目指す。
 
 お金がない人や、山小屋の苦手な人は、宵のうちに5合目を出発し、完全徹夜でご来光を目指す。

 脚に自信がある人は、夜中の2時か3時に自宅を出発し、河口湖、水ヶ塚、須走の駐車場にマイカーを停め、早朝のタクシーかシャトルバスで5合目に向かう。

 いずれも、普段の生活パターンと著しく異なるため、満足な睡眠をとることは難しい。

 
 普段、高尾へ山歩きに行く感覚で、日本一の富士山に登ることはできないだろうか。

 高尾評論では、健脚者限定になるが、小田急線の新松田7時20分発、須走口5合目行きの一番バスに乗り、その日のうちに下山するプランを計画し、昨日行ってきた。
 なお、このバスは、土日のみの運行であり、平日は使えないことを最初に言っておく。

 須走口5合目到着は8時50分、新松田行き最終バスは17時10分だから、8時間で富士山頂まで往復しなければならない。
 ただ、これは努力目標で、新松田行きに乗り遅れても、御殿場行きは20時30分まである。
 このうち、17時30分と18時30分に乗れば、御殿場で新宿行き小田急箱根高速バスに乗れるし、19時20分と20時30分に乗れば、JR御殿場線で東京都心まで帰れる。


 小田急線の下りは、できれば、新宿5時31分の始発急行に乗りたい。
 5時46分、6時1分発でも間に合うが、新松田から1時間半かかるバスで立つリスクが増える。
 
 小田急で乗る車両は、6号車だ。
 新松田の改札口を出ると、すぐ前の2番乗り場が5合目行きになる。
 まずここでザックを降ろし、すぐ後ろにある、はなの舞に付随した切符売り場の開くのを待つ。
 売り場では、帰りは新松田と御殿場の両方に降りる可能性がある旨を言い、3千円の往復券を受け取る。
 
 バスは、普通街中で見かける通勤用の車両だ。
 横向きの小田急の車両もそうだが、陣馬山当たりに行くのと同じ雰囲気で行くことができる。
 
 交通費も小田急も入れ、新宿から5千円以内と、貧乏山歩きにふさわしい額だ。


 バスは30人の乗客を乗せ、8時40分に須走口5合目に着いた。
 ここは5合目と言っても標高1970mで、メインルートの吉田口や富士宮口より300〜400m低い。
 ここは、実質上、4合目に相当し、須走口の頂上まで標高差1750mを登ることになる。
 
 標高の低い分だけ、高度順応にかける時間も少なくて済む。

 
 高尾評論は、9時ちょうどに出発した。

 こじんまりした商店街を過ぎると、森林の道に入る。
 他のコースのような殺伐とした感じはない。
 標高が高いから高尾とは植生は全く異なるが、いつも高尾を歩くのと同じ感覚で歩くことができる。
 高尾評論では、1時間に400mを登る要領で歩くことにした。
 水平距離で時速1.8kmに相当するペースだ。

 周りの人のペースはとにかく速い。
 50p以上の高さの岩もものともせず、一跨ぎで飛び越す人が多い。
 吉田口と合流する本8合目までの間に、8割がたの人に抜かれたと思う。抜かせてもらったのはたったの2割だ。
 
 富士山と高尾以外でも、アリさんの行列状態で登る山は、丹沢の大倉尾根、北アルプスの八方尾根、白馬大雪渓、燕岳合戦尾根などあるが、登山者の歩く速さはそれらのどこよりも明らかに速い。
 速いと言っても、すぐに止まり、座り込む。
 休みながら景色を楽しむのなら別だが、あまり効率的な歩き方ではないと思う。
 
 本8合目の胸突江戸屋で吉田口からの道と合流すると、軽い渋滞が始まる。
 道自体は広いのだが、登山者がその辺に座り込み、道をふさいでいる。
 みんな、高山病で苦しんでいるので、非難もできない。
 とは言え、落石の危険があるし、他の登山者が戻したものも散らかっているので、場所は選んだほうがいいと思う。

 マイペースを保ったが、割とあっけなく、吉田口頂上には13時過ぎに着いた。
 
 頂上と言っても、ここは外輪山の一角に過ぎず、富士山の本当の頂上は、外輪山の反対側にある剣ヶ峰だ。
 ほとんどの人はここで引き返すが、実にもったいない。
 外輪山を歩くお鉢巡りをしなければ、富士登山の魅力の半分も味わえないと思う。
 時間と体力に余裕があり、強風が吹いていないのなら、ぜひお鉢巡りを一周してほしい。
 いかにも火山である火口の様子が分かるし、吉田口では見えない青木ヶ原、日本アルプス、駿河湾、伊豆半島などが見える。
 特にお鉢巡りの北西側は、登山口、下山口がなく、静かな山歩きができる。

 
 人がまばらになった外輪山を反時計方向に歩き、剣ヶ峰に向かう。
 剣ヶ峰の頂上は、証拠写真を撮る人が、お鉢巡りの道までずらっと待っている。
 3週間前、徹夜で吉田口から登った時も、明け方、同じように並んでいたから、夏の土日はいつもこんなものなのかも知れない。
 せっかく立った剣ヶ峰だが、展望台は閉鎖されていた。

 結局剣ヶ峰を出たのが14時半過ぎ、須走口を下り始めたのは15時になっていた。
 
 せっかく公共交通機関で来たのだから、登り口と下り口は違うところにしたい。ただ、須走口は、登山道と下山道が違うため、飽きることはない。

 砂走りといえども、高尾評論は小股でいくのがいいと思う。
 砂の中に大きい石があり、それにつまづいて上半身を骨折した話はいくつか聞いている。
 他の山道の下りより、若干後ろ足に重心を残すように降りると、踵からうまく砂の中にめり込み、結果として1歩でたくさん下ることができる。

 丁寧に下っても須走口頂上から2時間弱で5合目に着くことができた。

 17時10分発、新松田行きのバスの乗客はたったの13人だ。
 休日の陣馬、小仏、奥多摩、丹沢のバスと比べると寂しい限りだ。
 やはり山歩きの客層が違うのだろう。


 肝心の天気は、7合目から上は快晴だが、その下に雲海が広がり、山中湖と小田原の街が少し見えただけだった。
 それでも普段と睡眠パターンをそう変えずに富士山頂に立ち、帰りの渋滞も気にせず、運転の神経も使わずに宵のうちに自宅に帰ることができた。
 タイトなスケジュールだったが、疲れを翌日に持ち越すこともなく、それなりに満足できた。
 
 こんな純粋日帰りのプランを紹介すると、登山関係者から怒られそうだ。
 しかし、普段の日常生活と同じ調子で山歩きすることを、みんなでもう一度考えるきっかけになればと思う。

 このプランでも時間が余り、体力にも自信があれば、長い御殿場口を降りるのもいいだろう。

 
 最初に述べたように、以上のプランは健脚者限定だ。
 
 目安は、高尾で以下のことが可能な人に限られると思ったほうがいい。
 ・高尾山口から陣馬山頂までの往復を、休憩時間を含め、8時間以内にできること。
 ・一昨年まで行われていた八王子八峰登山大会健脚コースで、時間内にゴールできること。
 ・秋から冬の日が短いとき、井戸、鎌沢入口、上川乗バス停から生藤山に登り、陣馬山を経て、明るいうちに高尾山口まで縦走できること。
 これらは、必要条件であり、十分条件ではない。
 さらに、高所に強いことが条件だが、これだけは実際に富士山に登ってみないと分からない。

 それから、いくら健脚でも、ヘッドライトは必ず持っていこう。
 須走口の下山路は、砂払いを過ぎてからは樹林地帯になるので、ルートを確認できる地図を持っていくこと。


 
 お勧めの富士登山コース
 

 登りは富士宮口と須走口
 下りは須走口と御殿場口

 
 高尾評論が数多い富士登山サイトを差し置いて言うのも僭越だが、以上を推薦コースとする。

 富士宮口は、何と言っても標高が一番高く、登山時間が短い。
 欠点は、公共交通機関がうまくいかず、日帰りがほぼ不可能だ。
 下山路は、登山路と同じで、面白くない。

 御殿場口5合目は標高が1400mしかなく、さすがにこれを登るのは大変だ。
 下りは大砂走りを豪快に降り、富士山の大きさが実感できる。
 富士宮口5合目でマイカーを置いてきた人は、宝永山経由で戻ることもできる。

 須走口は、今まで述べたように、自然が一番残っており、標高差の割には所要時間が少なく、疲れない。

 じゃ、一番人気の吉田口はどうだろう。
 ここでは人工的な階段を登ることになる。
 富士山だから天気さえよければ素晴らしい展望に恵まれるが、登山道自体は、廃墟になった巨大な工場か城の中を延々と歩く感じだ。
 階段が切れた後の急登は、かなり厳しい。
 ただ、人が多い分だけ、夜行登山の際は安心だ。
 公共交通組には、新宿から直通の高速バスがあるのも助かる。
posted by 高尾評論 at 17:45| 東京 ☀| Comment(0) | 富士山と高尾山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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