2013年04月26日

山歩きデビュー

 高尾山はパワースポットだと思う。
 それは、既に高尾山口でも分かる。
 電車でもマイカーでも、乗り物を降り、人ごみの一員としてケーブルの清滝駅に向かうところから始まるのだ。
 男も女も、老いも若きも、みんな、「山に登るぞ」という気合が入っている。
 高尾山頂までは登って当然と言う活気がある。
 こんな活気は、例えば本格的な山岳リゾートの上高地でさえない。
 普通、山岳リゾートといっても、マイカーから降り、証拠写真を撮り、ランチかお茶をし、あとはせいぜい自分の車が見える範囲を歩き回って終わるのが普通だ。
 一方、高尾山口を出た人の半分以上が高尾山頂まで登っている。

 以前、「とりあえず高尾へ」で、「気が向いたとき、何も考えず、ぶらっと高尾に行ってみたらどうか」と述べたことがある。
 その気持ちは今も変わらない。
 高尾山はあらゆる山の中で、一番敷居が低く、安心して登れる山だ。

 ここでは、連休を控え、より快適に高尾に登ることを提案しようと思う。
 以下に述べるのは、初めて山歩きをする人用だ。
 高尾は初めてでも、山歩きを何度もしている人は関係ない。
 自分の体力がどのくらいあるか分からず、細い山道や勾配のある土の道を歩いたことがない人が対象だ。
 山歩きをしたことのない人でも、体力や運動神経に自信がある人は関係ない。

早発早着を心掛けるべし
 だいたい本格的な山歩きをする人は、日の出とともに活動を開始し、午後は予備時間としてとっておくのが常識だ。
 早朝が一番景色がいいし、午後は天気が崩れやすい。
 と言うと、本格的に歩く人以外は、遅くに出ても構わないのではないかと言われそうだ。

 しかし高尾には別の問題がある。
 特にこれからのゴールデンウィーク、遅くに高尾に着くと、とにかく混むのだ。
 初めての人は、どうしてもメジャールートを通るから、混雑は避けられない。
 例えばゴールデンウィークだと、できれば9時までに高尾山口に着いていたい。
 それでも、下る時間帯には、登る人をかき分けながら歩くことになるかもしれない。
 高尾に関しては、初心者ほど早めに出発することを勧める。
 よく、日没直前に稲荷山尾根を登ってくる人がいるが、何度も高尾山域に来て、高尾山頂でダイヤモンド富士を見たり、関東平野の夜景を見る人専用と思っておこう。


メジャールートを歩くべし
 高尾山中でのメジャールートは、以下の道だけだ。
 自然研究路1号路
 4号路
 5号路
 6号路
 稲荷山尾根コース
 陣馬高尾縦走路のうち、高尾山〜小仏城山間

 高尾評論は、何とつまらないことを言うのだろうと思われるかもしれない。
 しかし、山歩きが初めていだという人には、このコース以外、紹介できないのが事実だ。
 確かにこの他にも快適な道はいくつもある。
 しかし、それらの道は、迷いやすかったり、下山してからの交通が大変だったりする。
 最初の山歩きは、ちょっと物足りないくらいでいい。
 物足りないと感じた人は、山が好きな人のはずだ。
 次回はもう少し準備を入念にし、長距離に挑戦することにしよう。

 1号路
 最近、全区間が舗装となった。
 「そんな道、バカらしくて歩けるか」という人は、恐らく完全な初心者ではないから、他の道を歩けばよい。
 しかし、たかが舗装路と言っても、谷あり、尾根あり、重厚な杉並木や境内ありで、初めての人で山が好きな遺伝子を持っていれば、退屈することはないだろう。

 4号路
 昔は吊り橋コースとして人気があったが、最近はそれほどでもないようだ。
 確かに吊り橋自体は、地方の町おこしで続々とできる吊り橋に比べると小さいしスリルもない。
 1号路の舗装と混雑を敬遠する人向きだ。

 5号路
 山頂付近を一周するコースで、これを全部歩き通す糞まじめな人はいないだろう。
 山頂の混雑を迂回する手段としてのみ存在意義がある。

 6号路、稲荷山尾根の登り
 どちらも高尾山口から高尾山頂まで、直接登るコース。
 6号路が谷間、稲荷山は尾根道を通る。
 標高差は400m以上になる。
 初心者なら1時間半は見ておきたい。
 途中で体力が尽き、もう登れないと思ったら、同じ道を下山するしかない。
 6号路は4月27日〜5月6日と11月は、琵琶滝から先が登りの一方通行となる。
 この先、山頂までかんばれるかどうかは、琵琶滝までで決めたい。
 それでは、一方通行期間中、琵琶滝よりも上で動きが怪しくなったらどうするか。
 みんなのひんしゅくを買っても、同じ道を降りるしかないだろう。

 6号路と稲荷山とどちらがお勧めか。
 初心者には、6号路を勧める。
 6号路は川沿いを歩き、最初の勾配が緩いから、自然にウォーミングアップができる。
 稲荷山は、取り付きからいきなり急な階段となり、既にここでペース配分ができなくなることがあり得る。
 一見、体力がありそうな十代の子が、稲荷山尾根の登りで動けなくなっているのを見かけることは、よくある。

 6号路、稲荷山尾根の下り
 高尾山頂まで行くのに、ちょっとした下りで苦手意識を持ったなら、この両コースを降りるのはあきらめよう。
 みんなに見られながら、カニさん歩きで標高差400mを下るのはつらい。
 カニさん歩きの歩数だけで2000歩以上になる。
 高尾山口に着いたときは、肩までガチガチに固まっているだろう。
 そのような人でも、下りの重心移動とリラックスの仕方を教われば、大部分は、問題なく降りられるようになる。
 それまでは、無理をせず、近くの公園などで練習し、次の高尾に備えることにしよう。

 逆に、急斜面を調子に乗って、ドカドカ降りるのも止めにしたい。
 最悪の場合、膝が笑う状態になり、足に力が入らず、どうにも動けなくなることがある。


 陣馬高尾縦走路の小仏城山まで
 高尾山頂まで登ったが、まだ余裕がありそうだという人だけに紹介する。
 特に、高尾山頂で昼ご飯を食べる場所がない時にお勧めだ。
 小仏城山から先、陣馬高尾縦走路で小仏峠まで、あるいは相模湖までは、いずれも急勾配となる。
 下った先は、高尾山口ほど交通の便が良くない。
 残念ながら、今来た道を戻ったほうが安心だ。


なるべく電車で行くべし
 小さい子供連れ、体が不自由な人以外は、なるべく電車を使いたい。
 何度も言っているように、高尾山口周辺の駐車場は台数が限られている。
 マイカーだと、時間に気にせず、思いついたときに出発し、下山したらすぐに乗れるというメリットがある。
 しかし、到着しても駐車場が満杯で、高尾駅まで戻って電車で来ることになりかねない。
 一方、高尾山口からの電車も10分間隔にでているため、時刻表を気にすることはない。
 電車だと山歩きの他に家と駅往復の歩きの時間が増えるが、行きは準備運動、帰りは整理運動と思おう。
 マイカーだと、車に戻ってすぐ着替えと言うことができるが、初心者で着替えを持ってきている人は少ないだろう。
 違うグループがそれぞれのマイカーで来て、高尾山口集合というような計画は、余程早い時間帯以外は実現性がない。


雨の日は止めるべし
 もし上下ゴアテックスの雨具を着て、ゴアテックスの靴を履き、リュックサックカバーも掛けていたら、雨の高尾も楽しいものになるだろう。
 ただ、それだけの装備をしている人に、初心者はいないはずだ。
 「雨だから、ケーブルに乗って、薬王院くらいで帰ってこよう」
 という考えにも賛成はしかねる。
 いくら雨に当たる時間が短くても、濡れた衣服でその後長時間過ごすことは、不愉快極まるだろう。
 また、傘を片手に山歩きは、歩き方に自信がある人以外には勧められない。


ピチピチのジーンズは避けるべし
 ハイヒールで山歩きは大勢の人の注目を集めるが、そのような度胸のある女性は高尾にはさすがに少ない。
 そのかわり、太ももがぴったりしたジーンズを履いて高尾に来る人は結構多い。
 ジーンズはアウトドアに使うといった間違った風潮があるからだろう。
 これがどうしてダメかと言うと、実際に階段を登ってみればすぐ分かる。
 足が上がらないのだ。
 そもそもピタッとしたジーンズは、脚の美しさを強調するためのものだろう。
 足が自然に前に出ず、不自然な姿勢になったり、ちょこまか歩いたりしていれば、せっかくのジーンズも台無しだろう。
 さらにジーンズの場合、雨や汗で濡れると、皮膚に生地がピタッとくっ付き、余計足が上がらなくなり、危険なことも起こり得る。
 それならスーツのズボンの方がまだ合理的だ。
 山着がないのなら、ジャージでもいい。
 ウエストのゴムひもだけは確認しておこう。

 ついでに言うと、着る物全体で、なるべく綿は避けた方がいい。
 夏冬にかかわらず、吸湿性の良いものが快適だ。


両手は開けるべし
 山と言うか、歩くことを主眼にした場合は、必然的にこうなる。
 となると、リュックサック(山ではなぜか「ザック」と言う)を背負うことになる。
 リュックサックの欠点は、何と言っても格好悪いことだ。
 山ボーイ、山ガールファッション以外、リュックサックと衣類との相性は悪く、あまり似合う人はいない。
 少しでも格好良くするには、ある程度の開き直りが必要だ。
 つまり、片方の肩だけに掛けたり、尻リュックなど、中途半端な背負い方をしないことだ。
 なるべく背中の高い位置に左右均等に背負い、肩ベルトを締め、バスト、ウエストベルトを締める。
 これをちゃんとすれば、軽いものを入れたくらいでは、ほとんど重さを感じないだろう。

 手持ちのバッグが有効なのは、小さい子供と一緒で、お菓子や飲み物などをすぐに出す必要のある時だけだ。


飲み物だけは用意すべし
 高尾山で一番怖いのは、脱水症だろう。
 いつの季節でも、十分起こり得る。
 高尾山中にはあちこちに自動販売機が用意され、山頂まで東京都の水道水が引かれている。
 ただ、6号路や稲荷山尾根を歩く場合、途中で水は補給できない。
 初心者は、少し多めに水を飲んでおく方がいい。
 最近、高尾山頂直下に豪華トイレができ、トイレ不足もだいぶ解消された。









posted by 高尾評論 at 19:44| 東京 ☀| Comment(0) | とりあえず高尾へ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月31日

とりあえず高尾へ

 高尾評論の目的のひとつは、山歩きの敷居を低くすることだ。

 気が向いたとき、とりあえず高尾へ出掛けてみたらどうだろう。
 季節は春夏秋冬を問わない。天気も雨や雪や風が強かったり、その影響が残っていない限り大丈夫だ。
 新宿から高尾山口まで、京王線で1時間弱、日中なら平日、土日を問わず、乗り換え便を含めると10分間隔で電車は発車している。運賃は往復740円、割引切符を使えばケーブルとリフトの往復も含めても全部で1320円だ。
 普段運動していなくても構わない。持ち物だって、家にある有り合わせのもので十分だ。山歩きの経験のあるリーダーなんていらない。ちょうど都合が着く仲間だけで行けばいいし、誰もいなければひとりでもいい。
 あれこれ考えていると、結局行かずじまいになる。気が向いたとき、とりあえず高尾へ出かけてみたらどうだろう。
 高尾は、何と言っても人が多いし、店も多いし、道も整備されている。他の山よりもずっと安全なことは間違いない。

 こんなことを言っていると、山の専門家から怒られそうだ。
「そういう奴が遭難の原因を作っているのだ」
 高尾といっても山に変わらない。山登りの装備や心構えをした上で山へ登るべきだということだろう。
 
 では、高尾がどのくらい危険なのか。客観的な統計を示さずに、「危ない」「いや、安全だ」と言っても説得力がないだろう。
 平成21年の警視庁高尾署内での山岳遭難事故は37件だ。この中には、山中で発病した人も含まれている。うち、死者は2名だ。平成22年は、まだ7月までしか公表されていないが、死者はまだいない。事故の件数とは、高尾署の山岳救助隊が出動した回数だ。高尾署管内には、高尾山から陣馬山の先まで含めるから、実際の登山者数は3百万人程度だろう。ほとんどみんなが日帰りだから、1日で亡くなる確率は150万人にひとりとなる。
 これと対照的なのが、自宅での不慮の事故だろう。風呂場での溺死、食べ物での窒息、階段の踏み外しの順に多い。平成21年は1万3千人以上、つまり1日で36人が亡くなっている。日本の人口が1億3千万人弱だから、1日で亡くなる確率は360万人にひとりとなる。
 家でじっとしていて死ぬ確率が360万分の1、高尾山で活発に動いて死ぬ確率が150万分の1だ。この数字を多いとみるか、少ないとみるかはみなさんの判断だ。それに、高尾の遭難は、あまりにも標本数が少なく、これが数倍増えたりゼロになったりしてもおかしくない。
 ただ、このくらいの確率で、やたらと敷居を高くし、高尾へ行くのを控えるような風潮を作るのはよくないと思う。高尾の遭難をゼロにするのなら、高尾へ行く人がゼロになればいいのだが、その人たちは家の中で事故に遭う可能性も結構ある。

 そうは言っても、事故率が低いからと言って、無神経に登ってもいいということではない。山歩きの絶対人数が多い高尾のことだから、結構遭難の救助現場に出くわした人も多いのではないか。高尾山頂まで救急車が登ってきたり、場合によってはヘリコプターが飛ぶこともある。隊員の懸命な活動、仲間の悲痛な表情を見ると、遭難は少しでも避けたいと思うだろう。高尾評論では、山歩きする人を排除することなく、山歩きの安全を提案していきたい。

 まずは無理をしないことだ。当たり前のことを言うようだが、要するに自分の感覚、感性に逆らうような頑張りはしないと言うことだ。
 アルプスや北海道の山で、遭難の話をよく聞く。何か月も前から計画を建て、数日の休暇を何とか作り、数万から十数万円の大金を使って山へ行けば、天候や体調が多少すぐれなくても無理をして山へ登ろうという気持ちにもなるだろう。
 しかし、相手は高尾だ。東京都内在住の人ならば、交通費は数百円から千数百円で済むし、アプローチの時間もふつう1時間ちょっとだ。「せっかく来たのに」とはならないだろう。この週末だめなら、次の週末行けばいい。春行けなければ夏に行けばいい。
 自分の体調と高尾の地形と天候を自分で感じ取ることだ。何が何でも山頂まで行かなければというような強い意志を持つことなど、絶対に必要ない。
 寒さや暑さが苦手なら、そういう日は行かない方がいい。電車の中で体調や天気が思わしくなければ、中央線なら立川で降りて昭和記念公園、京王線なら高幡不動で降りて多摩動物公園という手もあるだろう。高尾山口駅で降り、稲荷山尾根や1号路を登り始めても、きついなと思えば、ちょっと戻ってケーブルやリフトを使えばいいだろう。ちょっとした下りでも苦手意識があれば、帰りは迷わずケーブルを使うことだ。日没の時間など、常識で分かるし、山の天気は急に変わると言っても、何となくいやな感じは分かるだろう。
 
 ただ、ひとつだけ例外がある。自分の感覚に頼っていては遅いのが、脱水症状だ。これだけは気づいた時には大変なことになっていることがある。比較的気温が高い高尾山では要注意だ。水分は早め早めに摂るに限る。高尾山から陣馬山にかけての尾根筋では、主な山に茶屋がある。しかしいつも開いているとは限らない。高尾山の1号路では自動販売機が頻繁に置いてあるが、他の道には山の入り口以外、一切ない。シーズン中の高尾はトイレが混むので、水を飲むのを控える人もいるだろう。だが、どちらを優先するかと言えば、脱水症状のリスクを少なくするほうだ。トイレの場所は後で述べる。
 
 もうひとつ、安全のために敢えて言えば、早出をすることだろう。朝早く行動することは、日が暮れるまでに時間があること言うことだ。初心者にとって日没は本当に怖いものだし、日暮れ間近にあせって歩くと、事故を誘発する。
posted by 高尾評論 at 22:32| Comment(0) | とりあえず高尾へ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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