2012年04月24日

ケーブルとリフト

 高尾山の集客に、ケーブルとリフトが果たしている役割は大きい。ケーブル、リフト、ロープウエイ、ゴンドラがある場所としては、高尾山は東京都心から一番近い。しかも、通勤路線の終点と言っていい高尾山口から歩いてわずかな場所に乗り場がある。
 そして何より、ケーブルもリフトも高尾山頂まで行っていないのがいい。行楽客は、山上駅の霞台から薬王院を通り高尾山頂まで、人によっては1時間近くをかけて登ることになる。これで、行楽客も「登山者」となり、心地よい疲れを感じながら帰路につくことができる。

 高尾山は、ケーブル(ロープウエイじゃない)とリフトというふたつの乗り物が並行して走っている、全国でも唯一の山だ。
 両方とも高尾登山電鉄と言う同じ会社が経営しているため、往復乗車券を買ったとしても、別々の乗り物、例えば登りはケーブル、下りはリフトという選び方もできる。

ケーブルカー
‐地に足が付いた貴重な乗り物‐
 今や日本では、ケーブルカーは非常に貴重なものになってしまった。関東以北でケーブルカーがあるのは、筑波山と御岳山と、箱根2箇所の計5箇所だけだ。リフトやロープウエイやゴンドラと比べると、確かに展望は良くない。しかし山の斜面を一歩一歩踏みしめながら登る、あの登山道を歩くのと同じような感覚はケーブルカーならではのものだ。新緑や紅葉の時期、近くを通る自然研究路6号路から、アマチュアカメラマンが、広葉樹で覆われた中をくぐるケーブルカーの写真を撮っているのをよく見かけるが、確かに絵になる風景だろう。地べたを這っているので、風の影響も受けにくく、かなりの悪天候でも運行しているのは頼もしい。
 高尾登山ケーブルの謳い文句は、「日本最急勾配」だ。山上駅近くのトンネル付近で、31度以上ある。スキー場の上級者コースに匹敵する傾斜だ。しかし、平均勾配はたいしたことなく、山麓駅である清滝駅付近では、かなりゆるい。この勾配の差が、高尾登山ケーブルの面白いところだ。

 清滝駅→高尾山駅
 清滝駅でケーブルに乗ると、進行方向に向かってつんのめりそうになる。下は勾配が緩くて上が極端に急になっているので、ケーブル自体の構造を、最初は前のめりに造ってあるのだ。
 清滝駅を出ると、しばらくケーブルカーは前のめりになったまま、緩い勾配を登る。すぐ短いトンネルに入り、路面軌道特有の土の匂いが感じられるだろう。付近はモミジをはじめ、広葉樹が多く、新緑、紅葉の際は見ごたえがある。
 中間のケーブルカー同士が交換する地点を過ぎると、勾配は急になり、前のめりがなくなる。ほどなく鉄橋を渡るが、急勾配も手伝って、実際以上の高度が感じられる。眼下には高尾山口駅周辺が見え、その後ろの尾根の向こうには、関東平野が見えてくる。
 山上駅の手前ではさらに勾配が急になり、ケーブルカーの床は谷底に引っ張られるように傾く。後ろ向きの座席に座っている人は、足を踏ん張ることになるだろう。歓声が上がるのもこの辺だ。
 2番目のトンネルの途中で勾配はやや緩み、山上駅に到着する。

 高尾山駅→清滝駅
 下りだと、高尾山駅を出てすぐにトンネルに入り、トンネルの途中からいきなり最急勾配に突入する。上りでは感じないだろうが、ここで速度が一瞬、速くなる感じもする。それと同時に、谷に向かって放り出されるようなスリルがある。大げさに言えば、ジェットコースターが最高点を過ぎたときのようなものだ。
 勾配が緩くなるにつれ、展望もなくなり、穏やかに清滝駅に向かっていく。

 リフト
 ‐静寂が魅力‐
 カラフルな屋根が付いた二人乗りのリフトが動いている。乗り場、降り場は安全確保のため、至れり尽くせりの施設がある。どちらもベルトコンベアーが敷かれ、信号に従ってそこに乗ると、自然とリフトの椅子と合流するようになっている。
 スキー場では今やゴンドラや高速リフトが主流で、遅いペアリフトはガラガラの状態が続いている。ここのリフトのスピードはスキー場の遅いペアリフトと比べても悲しくなるほど遅い。もっとも、これが景色を楽しませるためのサービスという見方もできる。

 登りのリフトでは、途中で記念写真を撮っている。最初は展望がないが、しばらくすると真後ろに関東平野が開けてくる。地面からかなり高いところを通る箇所がある。下には当然ネットが敷いてあるが、高度感は相当ある。
 高尾山リフトの魅力は静寂さだ。速度が遅いのも影響して、リフトの上では、鉄塔を通過するときの揺れ以外、静かな時間が流れていく。皮肉なことに、高尾山の場合、ペアリフトが満席の状態になっても、メインの登山道の人口密度よりもずっと低い。それに、張り切って歩いているときは、周りの音など聞こえなくなる。喘ぎながら登っている人を尻目に、鳥の声や山を横切る風にじっと耳を傾けるのもいいものだ。

 ケーブルか、リフトか
 普通、山好きが書く文章なら、自然をより近くに触れることができるリフトと答えるだろうが、高尾評論では敢えてケーブルと答える。体力の温存を考えれば、少なくとも登りはケーブルを選びたい。
 理由はまず、ケーブルの方が山麓駅と山上駅との標高差が34mほど大きい。つまり、リフトだと、建物にして8階分の高さを余分に歩いて登ることになる。リフトは、清滝の切符売り場を出ると、階段をかなり歩かされる。リフト山上駅を降りてから、また階段と坂道をケーブル山上駅まで歩くことになる。
 大混雑している時間帯や極端に寒い時を除けば、ケーブルの方が全体の所要時間は短いことが多い。ケーブルは公式には15分間隔になっているが、客が集まればだいたい7分30秒で運行している場合が多い。乗っている時間は、ケーブル5分30秒に対し、リフトは12分だ。ケーブルカーで立ったとしても、リフトの登りに比べ、体力消耗は少ないだろう。
 特に、これから陣馬山など、遠くまでの山歩きを予定している人は、体力温存や時間節約から見ても、登りはケーブルを勧める。
 比較的空いている時期、往復乗車券を買った場合は、行きがケーブル、帰りがリフトを勧める。ただ、高所恐怖症の人には、下りのリフトはつらいかもしれない。
posted by 高尾評論 at 20:05| Comment(0) | アクセス評論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月06日

アクセス評論

電車かマイカーか
 実は、ほとんどの山歩きの場合、マイカーはとても便利なアプローチ手段になる。公共交通機関で山へアクセスする場合は、まず電車に乗り、何時間かに1本しかないバスに乗り換え、さらに林道を歩いてやっと登山口にたどり着くのが普通だ。
 一方、高尾山の場合、高尾山口というかなり山の懐に入った場所まで電車で行くことができ、すぐそばが登山口でケーブル、リフトの乗り場がある。
 駐車場も確かにあるが、電車と同じ高尾山口の駅前か、さらに高尾山から遠い場所になる。
 高尾山は、電車で行ってもマイカーで行っても、登り始めの条件は同じという、極めてまれな山だ。
 しかも、高尾山口までは京王線で新宿から1時間だ。運賃は片道わずか370円。日中なら電車は平日も土日も10分間隔に出ている。
 高尾を歩く楽しみとして、登りと下り、別のコースをとることが挙げられる。マイカーだと下山後、公共交通機関を使って自分の車を回収しに行く必要があるが、初めから電車とバスならその必要はない。
 マイカー登山でつらいのが、帰りの運転だ。帰りの電車の中を見ると、山の格好をしている人の半分は眠っている。山帰りの人の居眠り運転率など調べようがないが、かなりつらい思いをして帰っているのではないか。それでなければ、山歩きをセーブして、体力を帰りの運転のためにとっておかなければならない。
 圏央道が高尾山トンネルを掘り、高尾山インターができた。今まで高速道路のインターから遠かった高尾山だが、これでかなり近くなった。現時点ではまだ何とも分からないが、シーズンの休日は駐車場付近が渋滞する上、満車ということもある。高尾山口の駐車場が満車だと、高尾駅の方の駐車場まで行き、さらに電車に乗り換えて高尾山口まで戻る必要がある。
 行楽はマイカーと決めている人も、たまには電車で出かけてみたらどうだろうか。家から駅までの歩きは準備運動になるし、帰りは電車で眠りながら帰ればいい。
 どうせマイカーを使うのなら、もっとマイカーに向く山へ行ったほうがいいのではないか。山頂まで車で行ける山はたくさんあるし、公共交通機関では不便で登れない山もたくさんある。

中央線
 オレンジ色の中央線は東京駅から高尾駅まで出ている。高尾領域に行く場合は、原則的に高尾行きか大月行きに乗ること。他の電車は途中駅で止るか、青梅線に入ってしまう。一番速いのは中央特快で、データイムは1時間に3本出ている。青梅特快が来た場合、急ぐならこれに乗り、国分寺か立川で高尾行きに乗り換えると早い。
 電車は昔のいわゆる「国電」で、4ドア、全部横向きシートのごく平均的な通勤電車だ。
 
 新宿から高尾までは京王線との競合区間で割引運賃となり、540円と安い。但し、特定料金なので、どちらかひと駅でも超えてしまうと、この割引制度はすべてなくなる。
 なお、中央線には新宿から特急「あずさ」「かいじ」が両方合わせて30分間隔で出ているが、高尾は停まらず八王子で乗り換えになるため、ほとんど利用価値はない。
 標準的なコースで高尾山に登る人は、高尾駅で京王線に乗り換え、ひと駅乗った高尾山口駅が下車駅となる。
 
 中央線のさらに先の相模湖駅や藤野駅に行く場合、一部の直通を除き、高尾駅で乗り換えとなる。本数はここでがくんと減るのであらかじめ時刻を調べておきたい。

京王線
 新宿から高尾山のメイン玄関、高尾山口までをダイレクトに結んでいる。渋谷からは井の頭線で明大前、川崎方面からは南武線が分倍河原で接続しているが、武蔵野線、横浜線とは接続していない。

 電車は中央線と同じように、色気のない4ドアの横向きシートの通勤電車だ。休日のデータームは、準特急が実質10分間隔に出ている。
 新宿発毎時0、20、40分の「京王八王子行」は途中の北野まで行き、同じホームの反対側に停まっている各駅停車に乗り換える。毎時10、30、50分発の「北野行」は、そのまま乗っていると高尾山口まで着く。
 高尾山口発は「各停北野行」とある電車が北野から準特急新宿行きとなり、そのまま乗っていると新宿まで連れて行ってくれる。「各停新宿行」で新宿まで行く場合は、北野で準特急に乗り換えになる。
 初めての人にはとても分かりにくく、高尾山までは京王線に乗るなと言っているような、商売気がない表示だ。どちらに乗っても乗車時間は55分前後。新宿から高尾山口は、待ち時間を入れてちょうど1時間と覚えておけばよい。運賃は370円とアウトレット並みだ。

 レアものとしては、土休日の下りに限って、都営新宿線の本八幡から高尾山口までの直通急行が1日4本出ている。路線検索で、所要時間優先にするとなかなかヒットしないかもしれないが、乗り換え回数の少ない順にすると結構でると思う。

中央線か京王線か
 検索が容易にできる現在、どちらを使った方が目的地に早く到着するかを高尾評論で述べる意味はないだろう。
 ただ、新宿を通る場合は、京王線を勧める。
 まずは京王線の方が圧倒的に安いこと。中央線特別快速に比べ、京王線の準特急はまだ空いていること。特に行きは新宿始発だから着席チャンスが多いということがある。
 それに、JRから京王線に乗り換えるのなら、高尾駅よりも新宿駅の方が便利だ。京王線の高尾駅高架ホームは、レイアウトが悪く、かなり高尾山口寄りに造られている。中央線からだと、JRの跨線橋を越え、京王の改札口を過ぎても延々と歩き、長い階段を登ってやっと京王線のホームにたどりつく。これから山へ登ろうというのに、このアプローチは肉体的にも精神的にもこたえる。
 シーズン中、休日朝の京王線準特急の乗客は、高尾山に行く人の率が高い。カラフルな服装の乗客を見ると、車両は通勤用でも、山へ行く気分は盛り上がる。車内で朝食を食べていても、京王線の中ならそんなに違和感はないだろう。

それでもマイカーの人へ
 電車がいいと言っても、電車の便が極めて悪いところに住んでいる人、小さい子供がいる人、体が本調子でなくても高尾に行きたい人など、いろいろいるだろう。高尾評論は、来る者拒まずの精神だから、マイカーを使うなとは言わない。
 圏央道の高尾山インターができたため、今まで八王子インターを使っていた人もこちらに替える人が多いだろう。高尾山インターから高尾山の駐車場へは、国道20号線を東京方面に戻ってすぐだ。案内川に沿って国道を下ると、右手に薬王院の祈祷殿駐車場がある。
 空車の場合、ここに停めるのが無難だ。料金も1日で500円と、他の駐車場に比べて安い。但し、利用時間は午前8時から午後4時までとなる。
 ここが満車の場合はさらに国道20号線を下り、2つ先の信号を左折する。京王線高尾山口駅前に駐車場があるが、祈祷殿駐車場よりも狭いので、そちらが満車の場合はあまり期待できない。ケーブル、リフトの乗り場までは、祈祷殿よりもやや近い。
 ケーブル、リフト乗り場までの歩く距離を少しでも減らすのなら、祈祷殿駐車場のすぐ下にある信号を左折し、高尾山商店街を入る。商店が経営する駐車場がわずかながらある。
 すべて満車なら、高尾駅まで行って駐車し、電車で高尾山口まで戻るしかない。
posted by 高尾評論 at 20:55| Comment(0) | アクセス評論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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