2013年07月02日

富士山弾丸登山

 富士山の弾丸登山が批判されている。
 弾丸登山とは、宵のうちに五合目に着き、夜を徹して登る。
 山頂でご来光を仰ぎ、そのまま下山するというものだ。

 このような徹夜登山に対しては、高尾評論も反対だ。
 だいたい、どんな登山形態でも、徹夜登山と言うのはあり得ない。
 夜、山を歩くというのは、体調の問題だけでなく、道に迷ったり、落石を誘発したり、落石に気づかなかったりして、とにかく危ないのだ。

 山小屋での1泊パターン
 富士登山で一番多いパターンは、朝、自宅を出発し、昼前に五合目に着くプランだ。
 五合目で昼食を食べてから登山を開始し、夕方、8合目あたりの山小屋に着く。
 それから夕食、仮眠を取り、夜中の1時くらいに起床し、山頂でご来光を仰ぐ。
 
 しかし、これが本当に安全で健康的な富士登山だろうか。

 バスや車を降りたら、すぐに歩き出さず、五合目で昼食をとるのは、高度順応を兼ねるので、いいことだ。
 しかし、落雷が多い夕方に、8合目付近を歩くことになる。
 富士山は雷を避けるところがなく、どこに落ちてもおかしくない。

 さて、無事8合目の小屋に到着したら、寝室に何とか自分の体を入れるだけのスペースを確保し、普段の休日の昼食よりも少しだけ遅い時間帯に夕食を無理やり食べることになる。
 超満員の部屋でぐっすり眠れることができたあなたは、大物だ。
 ほとんどの人が、空気が薄く二酸化炭素の割合だけが多い山小屋で、眠ったか眠らないか分からないまま、長い時間が過ぎていく。

 やっと眠れたかなと思う午前1時、起床だ。
 普段ならそろそろ寝ようとする時刻に起き出し、更に活動しなければならない。

 山小屋を出ると、すごい寒さだ。
 この中を山頂まで歩かなくてはならない。
 当然夜行登山になるため、道迷い、落石のリスクも高い。

 頂上に近づくほど、歩くペースは落ち、渋滞が始まる。
 トップシーズンは午前1時に8合目を出ても、渋滞にはまり、ご来光までに頂上に着かないことがほとんどだ。

 頂上をあきらめ、ご来光に良さそうな所を選んで場所取りをする。
 場所取りをしてから、日の出までは猛烈な寒さに耐えることになる。

 何とかご来光を仰ぎ、再び頂上に向けての出発だ。
 と行きたいのだが、みんな一斉に立ち上がり、歩き始めるので、今まで以上の渋滞で、どうにも進まない。

 やっとの思いで頂上にたどり着いた。
 しかし、ここが本当の富士山頂ではない。
 標高3776mの日本最高地点は剣ヶ峰といい、吉田口や須走口から行くと、ちょうど反対側になる。

 火口を中心に、外輪山を1周するコースは、富士山のハイライトとも言えるが、もうその体力は残っていない。
 寒さと疲労で意識が朦朧とした状態で下山することになる。
 富士山の一般的下山路で断崖絶壁はないが、不注意で浮石に乗ってのねん挫などは多い。

純粋日帰りという選択

 高尾評論の富士登山の提案は、純粋日帰りだ。
 朝、日が昇ってから活動を開始し、日没前に下山するというものだ。
 こんなことを述べると、弾丸登山以上の無謀登山だとお叱りを受けるかもしれない。

 しかし、実際に歩いてみると、弾丸と言うよりも紙鉄砲や水鉄砲以下の速度だ。
 当然、走る必要は一切ないし、速足を強いられることもない。
 ゆっくりゆっくり歩いても、無駄な休憩さえしなければ、十分可能だ。
 5合目では準備体操と荷物チェックを兼ねて30分程度の高所順応をする時間もあるし、富士登山のハイライト、お鉢巡りもできる。

1秒で10pの標高を稼げば、純粋日帰りが可能

 単純な計算をすれば分かる。
 1秒で10p
=1分で6m
=1時間で360m
 つまり、
 富士宮口(標高差1350m)は3時間45分
 吉田口(標高差1500m)は4時間10分
 須走口(標高差1800m)は5時間
 で登りきることができる。

 1秒で10p登るとはどういうことだろうか。
 普段、我々が使っている階段の段差は17〜18p程度だ。
 その階段を1段に1.7〜1.8秒以上かけて登るというものだ。
 実際の階段をこのペースで登ったら、あまりにも遅く、自分はいらいらするし、周囲からは奇異の目で見られるに違いない。

 もう少し、実用的に考えてみる。
 だいたい、人が真面目に歩いている時の歩数は1分間当たり100〜120歩だ。
 1歩当たりの段差は5〜6pになる。
 平坦な場所も少しはあるし、休憩時間もある程度取りたいから、段差を8pくらいにする。
 1歩で段差8pを登るということは、1歩で30〜35p程度、つまり山靴を履いた自分の足ひとつ分くらいを出す。
 だいたい、普段歩く歩幅の半分弱だ。
 この歩幅を保ち、平地と同じ1分間当たり100〜120歩のペースで、水分、養分補給や着るものの調整、トイレ以外、なるべく休憩を取らずに進めば、日が昇ってから5合目を出ても、余裕を持って、午前中に頂上に立つことができる。
 
 ただ、吉田口のように、明確な階段が造ってある所は、段差8pを自分で区切りながら登ることはできない。
 このような場所は、階段1段を2,3歩かけて登ることだ。

 1秒で10p登る時の相対的スピードはどのくらいだろうか。
 まず、5合目の登山開始直後は、ほぼすべての人に抜かされる。
 6合目付近になって、早くも脱落しそうな人1割くらいは抜くことができるが、まだ9割の人に抜かされる。
 7合目になると、本格的な疲れが出る人がでてくるが、それでも、抜かされる割合は8割程度ある。
 8合目で高山病の影響が出るので、抜かされる割合は7割程度になる。
 9合目以上では、多くの人が疲労の頂点に達する。
 それでも抜く人と抜かされる人の割合はほぼ同じくらいだ。

 この歩き方で、多少の休憩を入れ、4時間弱から5時間で頂上に立つことができるのだ。

 7月1日、各放送局は、世界遺産登録後初の山開きの様子を報道した。
 まだ30代と思われる屈強のアナウンサーが、思い切り足を振り上げながら登っていた。
 そして、息絶え絶えになって、
「富士山は余裕を持って登るように、弾丸登山は決してしないように」
と訴えていた。
 
 悪いのは、山小屋に宿泊せずに登ることではなく、弾丸のようにがむしゃらに登ることだ。
 自分の体力を考えず、空気の薄い高山でいつもの階段を登る調子で歩いていると、心拍数は1分当たり軽く150を超えているだろう。
 普段運動をしている人なら別だが、何もしていない人がこの状態で富士山に登ると、効率が悪いばかりか、体にも悪いことは目に見えている。

 では、誰でも1秒10pのペースで5合目から頂上まで登れるのか。
 こればかりは何とも言えない。
 しかし、推測はできる。
 高尾山に登ってみればよい。
 清滝のケーブル駅脇から稲荷山尾根を通り、休憩なしで高尾山頂まで、1時間5分で歩くペースが1秒10pのペースだ。
 もう少し短距離なら、清滝から稲荷山展望台まで30分だ。
 素直で勘のいい人なら、一度登れば要領はつかめるだろう。

 ただ、富士山には高山病と言う問題があり、これだけは低山では見当がつかない。
















 
posted by 高尾評論 at 20:30| 東京 ☀| Comment(0) | 富士山と高尾山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。