2013年07月27日

18きっぷで那須

 那須火山帯の南部には、魅力的な火山が連なっている。
 南から日光、高原、那須、磐梯、安達太良、吾妻、蔵王と、それぞれが山域として独立しているが、この中で登山口までまともにバスが走っているのは日光と那須だけだ。

 日光は首都圏から最も近く、バスが頻繁に走っている。
 男体山、女峰山など、ガッツリ系の山が並ぶ。
 ただ、これらの山へは、JRよりも東武鉄道を利用した方が有利だ。
 運賃は安いし、乗り換えはないし、バスとの接続もいい。
 特に浅草発6時20分の快速は、登山ご用達列車とも言える。
 だから、日光に関して言えば、何もJRの青春18きっぷを使わなくても、四季を通して安い東武を使えば事は済む。


 次に交通の便がいいのが那須だ。
 那須岳は標高2000mに満たないが、活火山で樹林がないため、高山的な気分を満喫できる。
 いつも3アルプスを歩いている人でも、十分に満足できる山行になると思う。

 北関東の人にとっては人気の山で、シーズン中はかなり混む。
 人が多い割には、クマの目撃情報も多い山域だ。
 18キッパーは早朝の歩きはできないが、夕方は注意が必要だ。

 黒磯までは在来線と言えども非常に便が良く、ほぼ30分間隔で出ている。
 上野や新宿からだと、宇都宮乗り換えを含め、3時間弱で着くことができる。
 北アルプスのように前もってムーンライト信州の指定券を取っておく必要もなく、朝起きた時の天気予報と体調を見て、出掛ければよい。

 黒磯駅から那須ロープウエイのバスは1時間に1本は出ている。
 那須塩原駅が始発のバスもあるが、せっかく18きっぷを利用するのなら、黒磯駅までJRを使った方がいい。

 終点のロープウエイ駅で降り、ロープウエイの往復切符を買う。
 せっかく健脚が山へ登るのに、ロープウエイ利用、しかも往復とは何事だと思うかもしれない。
 確かに車道はもう少し上の峠の茶屋まで伸びており、ここから茶臼岳と朝日岳との鞍部の峰の茶屋まで登山道があるので、これを使えばロープウエイはいらない。
 しかし、往復ともロープウエイを使うことにより、茶臼岳山頂と無間地獄という那須火山ならではの魅力的な2箇所を歩くことができる。

 那須岳と言う峰はなく、いわゆる那須5峰とそれに続く峰々から成っている。
 この中で県外の普通の登山者が訪れて最も那須らしい範囲は、ロープウエイ山頂駅、牛ヶ首、隠居倉、熊見曽根(1900m峰)を結んだ長方形の中だろう。
 このおいしい範囲は、活火山那須の中心と言うべき範囲であり、木がほとんど育っていない、荒々しい地形の中を歩くことになる。

 しかし、広大な面積を持つ那須岳の中で、おいしい範囲は面積が狭く、高尾で鍛えた健脚にとって物足りない人も多いだろう。
 そこで、展望の良い那須岳最高峰の三本槍も登ることにし、以下のコースを推薦する。

 ロープウエイ山頂駅→茶臼岳→峰の茶屋→朝日の肩→朝日岳→朝日の肩→三本槍岳→朝日の肩→峰の茶屋→牛ヶ首→ロープウエイ山頂駅

 いわゆる難所としては、朝日の肩の少し下に鎖場があるが、雨で濡れていない時に落ち着いて通れば問題ないだろう。
 むしろ問題は、初心者がアリさんの行列状態で登る山域なので、人工落石が多いことだ。
 慎重な人はヘルメットを持って行けばよいが、電車利用ならそれも面倒なことは確かだ。


 ロープウエイを降りると、そこはもう茶臼岳の8合目で、木が1本も生えていない岩ばかりの山腹だ。
 ここでまず必要なのは、トイレに行く事だ。
 これからの行程には、他には一切トイレはない。
 それと、もうひとつ必要な事は、下りのロープウエイ最終時刻を確認することだ。

 いきなり茶臼岳に向かう急斜面を歩く。
 一般観光客も同じ道を歩くことになる。
 ここでも言えることだが、山では、
 「歩く人の多い道=歩きやすい道」
 ではないのだ。
 特に、観光客は、ペース配分の仕方が分からないので、平地と同じペースで歩いてしまう。
 その結果、山頂駅からわずか200m先の茶臼岳、牛ヶ首の分岐あたりで、もう体力を使い果たし、登れなくなってしまう人が続出する。
 那須ロープウエイの上は、一般観光客にとって、厳しい環境にあるのだ。
 われわれ登山者は、持ち物の確認をし、準備運動をした上で、観光客と張り合うことなく、自分のペースで登りたい。

 茶臼岳の頂上に近づくにつれ、岩が大きくなり傾斜も急になる。
 ただ、それも長くなく、茶臼岳の火口の一角に立つことになる。
 まずは茶臼岳の山頂を目指す。
 日光連山はもちろん、筑波、八溝、尾瀬の燧、至仏など、アルプスでは見えない山を始め、遠くには富士山までが良く見える所だ。

 一般観光客でも元気な人は、この山頂までは来ている。
 街歩きの靴とショルダーバッグでここまで登った人は偉い。
 これで下りもスムーズに降りられたのなら、山歩きの才能がある。
 今度はまともな格好をして、ぜひまた山へ登ってほしい。

 中には小学生の団体も登っている。
 先生が見ていないと思うと、山頂の大きな岩の陰の崖っぷちでかくれんぼをしている。

 続いて、お鉢を時計回りに歩く。
 お鉢自体は平坦なものだが、北西側の崖を覗き込むと、これから行く朝日岳、三本槍の真下に、峰の茶屋の避難小屋や無間地獄の蒸気が見える。
 頂上の喧騒を離れ、ゆっくり食事をとるにはいいところだ。

 お鉢を一周し、峰の茶屋へと下って行く。
 ガレ場を下ると、平坦な土地に着く。
 小さい石が整然と並行して置かれている。
「やっぱり自然の力はすごいものだ」
 そう感じる人は、人がいい。
 これは実は人工的なものなのだ。
 昭和20年代から40年代にかけて、ここは硫黄鉱山だったのだ。
 石のトンネルを造り、その中に噴気を通すことで、昇華した硫黄を取るための跡なのだ。

 牛ヶ首からの道と合流すると、すぐに峰の茶屋だ。
 峰の茶屋は那須主脈の最低地点で、なおかつ湯本と三斗小屋を結ぶ道との十字路になって、風の強い所だ。
 峠の見本と言うべきところだろう。

 この先難路、という標識がある。
 目の前に立ちはだかる朝日岳は、にせ穂高と異名がある厳しい表情をしている。

 道は最初、尾根の右側を巻き、続いて左側を巻く。
 道は厳しさを増してくる。
 やがて鎖がついた階段を登るようになるが、余程の時以外、使う必要はない。
 階段と鎖がいやな人は右側のガレ場を通ればいいのだが、こちらは落石注意だ。

 ストックを持っている人は、次の鎖場の前でザックにしまうことにしよう。
 こちらは尾根上に作られた階段を登ることになり、先ほどよりは少し手ごわい。
 といっても、よほど岩が濡れている時以外は、丁寧に歩けば問題ない。
 小さいピークを越えて少し下ると、この鎖場は終わる。

 次が鎖場のトラバースだ。
 左の谷が切れている一枚岩を越えることになる。
 こちらも丁寧に歩けば、歩くこと自体は問題ない。
 一番の問題がすれ違いだ。
 見通しが悪い所もあるので、渡る前に声を掛けておく方がいい。
 それでも、初心者が多い山なので、こちらが鎖場を渡っている最中なのに突っ込んでくるお調子者もいる。
 気が強い人なら追い返せばいいし、気が弱い人なら自分から戻ろう。
 それもいやなら、足場のしっかりしたところを選んでぴったりと岩にしがみつき、谷側を開けておくことだ。
 お調子者は谷側で身を危険にさらしながら通るわけだが、仕方ないだろう。

 短い2箇所のトラバースで鎖場は終わる。
 しかし、ここで休んだり、ストックを出したりしてはいけない。
 上を見れば分かるように、この場所は落石が非常に多い所だ。
 ほとんどが人工落石なので、人が多い時は特に注意しよう。

 ひと登りで朝日の肩に着き、ちょっとした難所は終わる。
 朝日岳は目と鼻の先だ。

 朝日の肩でザックを降ろし、空身で朝日岳を往復する人が多い。
 だが、高尾評論は、荷物を置いて山頂を往復するのは、どんな場合でも反対だ。
 ザックの中には、雨具や飲み物など、万一の時に大事なものが入っている訳で、一時的とはいえ、それを置いていくのは賛成できない。
 荷物が重くて仕方ないというのなら、最初からザックの中身を軽くしておくべきなのだ。

 朝日岳では、今まで登ってきた茶臼岳や関東平野が良く見える。
 それと、地形的に斜面の反響が起こりやすいせいか、那須ロープウエイの案内が良く聞こえる。

 山頂は狭く、混雑している時は長居しにくい場所だ。
 少し下った尾根上で、見晴らしが良く、休憩に向いている場所があるが、よく見るとハイマツの陰にティッシュがへばりついている。

 朝日の肩に戻り、熊見曽根に向かって進む。
 左側はバッサリ切れ落ちた谷だが、道がしっかりしているので特に問題はない。

 熊見曽根直下で巻き道があるが、ここは頂上まで登っておこう。
 頂上では、隠居倉からの道と合流し、会津方面が開ける。

 わずかに下って、通称1900m峰に向かって登り始める。
 右に見える、ちょこっとした突起が朝日岳だ。
 1900m峰よりも低く、山頂とは言えないほどの可愛い出っ張りで、峰の茶屋から見たのと大違いだ。

 1900m峰付近は平坦で、ケルンがいくつか積み上げられている。
 天気がいい日だと、会津盆地の右側、磐梯山の真下のかなり高い位置に猪苗代湖が見える。
 座る場所も多いので、混雑時はこのコースの中で、最も休憩に適している場所だと思う。
 時間がなくなってきたら、三本槍をキャンセルし、ここで引き返しても後悔はないだろう。

 目指す三本槍は、左側の山だ。
 一度右の山の頂上近くまで登り、鞍部まで下って更に登り返す必要がある。

 1900m峰から清水平までの下りは、このコースの中で一番嫌な所だろう。
 木の階段が劣化し、魚を食べた後の骨の残骸のように、丸太の一部だけがボロボロになって残っている。
 近々、ここも整備し直すだろうが、それまでは本当に歩きにくい道だ。

 清水平に出てほっとする。
 ここは湿原と言えば湿原だが、草がほとんど生えていなく、尾瀬のような雰囲気はない。
 その中の木道を渡る。

 この先は、火山的な雰囲気はなくなり、大きく溝の掘られた道を歩く。
 ちょっとしたアップダウンの後、三本槍への登りが始まる。
 こちらは最近整備された丸太の階段を登ることになる。
 ごく普通の山道なので、基本に忠実に小股で歩けば、山頂にはほどなく着く。

 山頂からは特に南会津の盆地が良く見える。
 今まで来た尾根は、この少し先でふたつに分かれ、片方が朝日岳、甲子山、もう片方が流石山、三倉山に達する。
 目の前のかっこいい山は、三倉山だ。
 ここよりも標高が高いように見えるが、実際にはそんなことはない。
 三本槍の山頂もラッシュ時はかなり混むところだ。
 山頂の西側に踏み跡があり、休憩できそうなところもあるが、ここもトイレ場となっている。
 まだ時間に余裕があり、健脚に自信があれば、大峠方面に15分くらい下った場所で鏡ケ沼を見ながら食事をするのがいいかもしれない。

 さて、ここからは、また1900m峰、朝日の肩を越えて、峰の茶屋まで戻る。
 途中、北温泉分岐があるが、これまた長いルートになる。
 ただ、天候が急激に悪化したときや体調不良の際は、こちらを選び、マウントジーンズのゴンドラが動いていればこれに乗り、麓でタクシーを呼ぶ方法がある。

 朝日の肩で、ストックを持っている人は、ザックにしまうことにしよう。
 ここからの下りは、登り以上に丁寧に歩くようにしよう。
 道を外れると、落石をする確率が高くなる。

 峰の茶屋からの下山路は、避難小屋を左折し、明礬沢に沿って下って行く。
 風の谷のナウシカで、最初にナウシカがメーベで滑空するような場所だ。
 最短でロープウエイ山麓駅に着くことができる。
 片道券が余ることになるが、手数料200円を払えば残りは戻ってくる。
 ここから牛ヶ首を通り、ロープウエイ山上駅までは1時間少々を見る必要がある。
 通常、ロープウエイの最終は4時24分なので、3時を過ぎていたら、無間地獄はあきらめよう。

 しかし、まだ時間と体力に余裕があれば、是非無間地獄まで足を延ばしてほしい。
 この場所が、那須の中で、一番活火山らしい場所だからだ。

 峰の茶屋からほんの少し茶臼岳に登ったところで、牛ヶ首方面の道を選ぶ。
 ここから牛ヶ首までは、ほとんど平坦で幅広の道が続く。

 先ほどからジェット機のような音がしないだろうか。
 確かにここは、羽田から北海道に行く定期便の航空路になっている。
 しかし、はるか上空を飛んでいるので、こんなに近く聞こえないはずだ。

 この音の正体は、無間地獄からの蒸気の音なのだ。
 何度も茶臼岳の襞を越えていくと、黄色い硫黄の中から、勢いよく上記が登っているのが見えてくる。
 この辺が無間地獄と言われるところだ。
 よく見ると、ここにも硫黄鉱山の遺構の跡がある。
 眼下に姥ケ原のひょうたん池を見ながら、わずかに登ると、牛ヶ首に着く。

 牛ヶ首で方向が変わり、朝茶臼岳に登ったのと同じ景色が眼下に見えるようになる。
 先ほどよりはアップダウンがあるが、それでも快適な道には変わりない。
 茶臼岳との合流点を過ぎると、すぐにロープウエイの山上駅だ。


 なお、このコースで物足りない人、ロープウエイ代がもったいない人は、
 ロープウエイ下→峠の茶屋→峰の茶屋→朝日岳→三本槍→峰の茶屋→茶臼岳→ロープウエイ上→牛ヶ首→峰の茶屋→峠の茶屋→ロープウエイ下
 のコースを推薦する。
 これだけ歩いても、高尾山口から陣馬山までの往復と同じかやや短時間でこなせるだろう。
 ロープウエイ下から峠の茶屋までは、車道の横に歩道専用の道がある。








posted by 高尾評論 at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 青春18きっぷ利用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月11日

18きっぷで爺ヶ岳、鹿島槍

18きっぷで行く高尾評論推薦の山は、大糸線沿線が多い。
その理由は、ムーンライト信州の乗車時間が長く、その先のバスの所要時間が比較的短いからだ。
 これで、夜行列車の中で少しは睡眠時間を確保できるし、別料金となるバス代も節約できる。

 南アルプスの北岳、甲斐駒あたりも十分日帰りできるが、甲府駅着夜中の2時過ぎだとほとんど車内で眠れないし、午前4時20分発広河原行きのバスまで、屋外で時間を潰すのもつらい。
 ということで、残念ながら、南アルプス、八ヶ岳などは、除外させてもらっている。

さて、北アルプスのイケメン、鹿島槍は、後立山第3位の高峰だ。
端正な双耳峰は、大糸線沿線だけでなく、浅間や志賀からもすぐそれと分かるたたずまいをしている。
白馬、唐松、燕岳に比べると、登山者がやや少ないが、柏原新道から登ると危険個所がなく、登りやすい山だ。
唯一の欠点は、距離が非常に長く、夜行日帰りで往復するのは、かなりの健脚者に限られる。
そこで、次善の策として、爺ケ岳までを往復することも可能だ。
鹿島槍往復の約6割の時間で往復できる。
柏原新道から行くと、鹿島槍の手前に鎮座する3峰からなる山が爺ケ岳だ。
麓から見て、残雪の形が種まき爺さんに似ているから爺ケ岳とついたらしいが、名前とは程遠い、これまた若々しい印象の山だ。

柏原新道登り口の扇沢は、アルペンルートの基地でもあり、大町駅からのバスが頻繁に出ている。
シーズン中は信濃大町駅5時半発のバスに乗る。
柏原新道登山口には、不思議なことにバス停がないし、自由乗降区間でもない。
したがって、終点扇沢から、今来たバス道路を10分ほど戻ることになる。
登山口出発は6時半くらいになる。

出発前に帰りの時刻の確認だ。
青春18きっぷで首都圏まで帰る人は、扇沢発17時ちょうどが最終だ。
これに乗っても新宿着は日が変わって翌日の0時9分となる。

特急利用でも良ければ、扇沢発17時55分の最終バスに乗ればいい。
最終バスに乗っても、往生際悪く、更に18きっぷを使いたいのなら、松本から甲府間のみ特急スーパーあずさを使い、後は普通列車に乗ることができる。

柏原新道は、燕岳の合戦尾根同様、極めてよく造られた登山道だ。
登山口の標高は1400m弱だから決して高くはない。
しかし合戦尾根と比べ、登りだして比較的早くから眺望が開けるので、単調さはあまり感じない。
最初はばかでかい扇沢の駅が眼下に見え、続いて谷の向こうに針の木、蓮華、これから行く種池山荘などが順々に見えてくる。
地名がたくさんついているので、自分がどの辺にいるか、よく分かるだろう。

森林限界近くなり、主稜線に登ったところが種池山荘だ。

ここで時間との相談だ。
これから行く爺ケ岳の南峰が間近に見える。
種池山荘から鹿島槍は、扇沢から種池山荘までよりも時間が1.3倍ほどかかる。
既に9時を過ぎているのなら、このペースで鹿島槍南峰までは日帰りで往復できない。
 
この先の冷池山荘で1泊するか、爺ケ岳まで戻るか、爺ケ岳を登りながら考えることにしよう。

爺ケ岳は3峰から成る。
3峰はそれぞれ間隔が空いており、別の山が3つあるような感じだ。
また、3峰すべてに巻き道が付けられている。

鹿島槍日帰りを予定している人は、爺ケ岳3峰はすべて巻き道を通り、まず鹿島槍を目指すことにしよう。
帰りに時間があれば爺ケ岳に寄ればよい。

ただ、鹿島槍に行くには、爺ケ岳から一旦冷池山荘まで下らなくてはならない。
冷池山荘の標高は先ほどの種池山荘よりも低い所にある。
それからさらに、布引山を越えて、鹿島槍南峰まで登ることになるのだ。

もしここまでいいペースで来ても、爺ケ岳の登りで疲れを感じた人、爺ケ岳が気に入った人は、鹿島槍をキャンセルしても後悔しないだろう。
爺ケ岳の展望は、鹿島槍南峰より少し劣るものの、それほど変わらない。
爺ケ岳だけを目的とする人は、一番近い南峰と、できれば中央峰も登っておきたい。
中央峰は南峰から一旦下るが、3峰の最高点だし、東側の盆地の景色がいい。
人も南峰より少なく、ゆっくりするのに良い。

北峰と中央峰との間隔は、中央峰と南峰よりも空いている。
北峰は更に空いているが、かなり遠くなるので、お勧めしかねる。

さて、鹿島槍を目指す人は、爺ケ岳の巻き道から、もったいないほど標高を下げる。
帰りにこれを登り返すと思うと、気が重い。

冷乗越で赤岩尾根を分け、最低鞍部まで下り、少し登ると冷池山荘だ。
必要なら水の補給をしよう。

 日帰り希望なら、この辺から時刻チェックを頻繁にしよう。
 折り返す時刻は、扇沢発17時ちょうどのバスに乗る人が11時45分、扇沢発17時55分に乗る人は12時15分が目安だ。
 いくら山頂が近くても、この時刻になったらスパッと登るのをあきらめたほうがいい。

 まもなく布引山が見えてくる。
 あれが鹿島槍だと勘違いする人もいるが、鹿島槍は布引山に隠れてここからは見えない。
 鹿島槍と布引山との標高差は206mだから、ここからだとまだ相当な登りを覚悟しなくてはならない。

 布引山も、爺ケ岳3峰と同じように、山頂のすぐ左側の巻き道を選ぶ。
 ただ、布引山を越えても、そんなに下ることはない。
 でんと構えた鹿島槍をめざし、ペースを崩さず登って行こう。

 細かい砂地のジグザグを登りつめると鹿島槍南峰だ。
 今まで、剱、立山、槍穂、表銀、裏銀方面しか見えていなかったのが、ここでは白馬、五竜、日本海方面が見える。
 
 鹿島槍北峰は、爺ケ岳と同様、南峰と離れたところに位置する。
 南峰から北峰までは、この先の五竜岳に向かう八峰キレットの難所の一部となり、今までとはガラッと変わる断崖の厳しい道となる。
 北峰は南峰よりも低いし、南峰でほとんどの山は見えるので、その先は行く事はないだろう。
 時間に余裕があっても、無理して北峰を往復するくらいなら、布引山か爺ケ岳3峰のどれかに寄り道した方がいい。
 

 帰りのネック、爺ケ岳の登りは、今までのペースを保ち、辛抱強く歩こう。
 鹿島槍日帰りができる人にとって、ここの下りは問題なく歩けるだろう。
 強いて言えば、柏原新道の石畳が、雨の時に滑るくらいだ。
















posted by 高尾評論 at 19:35| 東京 ☀| Comment(0) | 青春18きっぷ利用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月10日

18きっぷで白馬岳周回

白馬岳は後立山連峰の最高峰だ。
 優雅な姿から、「北アルプスの女王」と呼ばれる。
 中でも猿倉からの大雪渓を登るコースは、人気ナンバー1で、シーズン中はアリさんの行列状態となる。
 吹き上げる冷気に当たりながら登る大雪渓は、夏の風物詩であり、軽アイゼンさえ付ければ、初心者でも登れるのが人気だろう。

 ただ、この女王様は、ちょっと気難しいところがある。
 大雪渓めがけ、石を落しているのだ。

 落石はでかいもので牛くらいある。
 犬や猫くらいの大きさのものなら、よく落ちてくる。
 それに当たるか当たらないかは、確率的なものであり、避けられるかどうかは、技術云々よりも運に任せるところがある。
 ロシアンルーレットのようなものだ。

 だから、結論を言えば、高尾評論では大雪渓コースを推薦しない。

 それでも登りたいという人もいるだろう。
 落石の確率を少しでも少なくするにはどうしたらいいだろう。

 第1に、落石の多い時期を避けることだ。
 雨の日又は雨の後は避けること。
 雨で岩の周りの雪が解け、一気に落ちることがある。

 次に急に気温が上がった時を避けること。
 これも同じ理由だ。
 朝早く、雪が締まっている時間帯に歩くことだ。

 時期は8月の中旬以降とする。
 この時期になると、雪渓に亀裂が入り、そこに落石が埋まってくれる。
また、大雪渓の上の方がなくなり、雪渓を上がって夏道を歩くことになる。
 一番怖い左側の杓子岳からの落石はある程度避けられる。

 第2に、落石を受ける確率を下げることだ。
 何と言っても危険地帯は素早く通り過ぎること。
 どのくらい早ければいいかというと、早ければ早いほどいい。
 白馬尻でアイゼンを着け、歩きだしたら休憩は一切取らない。
 ガイドブックによってはゆっくり休みながら登るべしと書いてあるし、ツアーガイドでもリーダーが率先して落石の上で休憩していることがある。
危機管理はどうなっているのかと思う。
 記念撮影など、もっての外だ。

 と言っても、自分の体力以上に飛ばすと途中で休むことになり、却って危ない。
 大雪渓の終点に着いても、まだ落石はある。
 ここはアイゼンを着けたままか、すばやく外して手に持ちながらもう少し上まで登ることにしよう。

 第3に、万一、落石があっても、直撃をかわすことだ。
 大雪渓の落石は、音もなくやってくると言うが、それでも五感を総動員させ、落石を感知し、可能な限り、身をかわすことだ。

 そのため、大雪渓は登りのルートとしてのみとる。
 落石にお尻を向けていたのでは、落石がすぐ近くまで来ていても気づきようがない。
 登りのみとするということは、当然下りは別のルートになり、周回コースを取ることになる。
 
 会話は最低限必要なものだけとする。
 こんな場所でもおしゃべりを続けないとならない相手とは、本来来るべきではない。

 この区間はクマ鈴も外して鳴らないようにする。
 大雪渓はクマの通路にもなっているが、クマより落石の方が怖い。

 更に、トレッキングポールと言うストックを両手に持つ。
 小さい石なら、ストックで何とか、かわせられるかもしれない。

 第4に、万々一、落石を受けても、その衝撃を少なくしたい。
 そこで、ヘルメットを被る。
 この際、格好なんてどうでもいい。
 むしろ、見栄を張る方が格好悪い。

 複数で登る場合は、お互いの間隔を空ける。
 同時に直撃されることを避け、誰かひとりが直撃を受けた場合でも、残りの者が手当てするようにしたい。

 携帯の電源は一応切っておくが、ポケットなど、すぐに取り出せるところに入れておく。

 臆病な高尾評論は、これらすべてを実行している。
 ひとつひとつの行為では、落石の被害を減らせる確率は、せいぜい1割だろう。
 しかしそれが積もり積もれば、何分の一かに減らす事ができる。

 さて、白馬駅又は八方インフォメーションセンターで、本当に大雪渓を登るか、判断する。
 少しでも危なそうだったら、迷わず唐松岳往復に切り替えよう。

 大雪渓は下りには使わないようにと述べた。
 とすると、どこから下ることにしようか。
 一番近いのが栂池高原に下るコースだ。
 他に、白馬三山を越えて白馬鑓温泉から下山、白馬大池から蓮華温泉に下山も考えられるが、余程の健脚以外、日帰りは難しい。

 栂池高原に下るコースも、かなり飛ばさないと、日帰りではできない。
 その日のうちに首都圏に帰るとすると、栂池自然園発の最終時刻は以下の通りだ。
 路線バス(白馬駅まで)+普通列車乗継:15時ちょうど
 タクシー(白馬大池駅まで)+普通列車乗継:15時40分
 路線バス(白馬大池駅まで)+普通列車+松本から特急列車又は高速バス:16時20分
 タクシー(白馬大池駅まで)+普通列車+松本から特急列車又は高速バス:17時ちょうど
 この中で、タクシーはゴンドラ乗り場の下に停まっていることが条件だ。
 また、栂池自然園発ロープウエイの最終は、季節によって16時40分から17時20分までの幅がある。

 山手線内から白馬までの普通運賃は5250円だから、白馬山中に泊まり、1日に片道ずつ使っても十分元は取れる。
 白馬山中に1泊するといっても、遅い時間帯に大雪渓を登ると落石の危険性が高まるので、一番のバスを利用することにしよう。

 白馬駅5時55分発の始発バスは、トップシーズンは乗れない可能性もあるので、早めに並ぶことだ。
 
 猿倉の到着は6時半前、日帰りなら、栂池自然園までの持ち時間は8時間半から10時間半だ。
 白馬頂上宿舎、白馬山荘、白馬大池山荘に泊まる人も、小雪渓の上までは、日帰りの人と同様、落石を避けるためになるべく短時間で行動することにしよう。

登り口では、登山者カードは当然提出する。
時間がもったいないので、事前に書いてきてポストに入れるか、メールで提出しておこう。
 アイゼンも猿倉や白馬尻で貸し出しがあるが、一番簡単な4本アイゼンだし、借りる時間、それを試行錯誤で脱着する時間が惜しい。
 アイゼンは、家で何回も脱着の練習をし、装着は3分、開放は1分以内で完了したい。

 猿倉でトイレ、準備体操を済ませ、ゆっくりと登り始める。
 白馬尻では、大雪渓を一気に通過できるように、装備、体調の確認をする。

 大雪渓の通過時間は、昭文社の地図の2時間半を始め、どれも多めに書かれている感じがする。
 そんなに時間を掛けて登るべきではない。
 この周回を日帰りでこなそうという人ならば、白馬尻から葱平まで、1時間少々だろう。
 大雪渓は後半の方が落石の危険性が高い。
 体力配分をうまくとり、後半でもペースが落ちないようにしよう。

 大雪渓には、赤いマークが付けられている。
 8月も下旬になると、雪自体はかなり小汚くなっている。
 それでも、両側に迫る岩尾根の迫力はすごい。
 あそこから、落石が起こるのだ。
 大雪渓後半になると、傾斜が急になり、落石の確率も高くなる。
 アリさんの行列はペースが鈍り、休憩する人も増えてくるが、命が惜しければなるべくペースを崩さずに登り続けることだ。
 アリさんの行列を抜かすときは、左側杓子岳の方からの落石が多いから、右から追い抜くことにしよう。

 葱平を過ぎ、小雪渓でも、再び落石の可能性がある。
 左側に避難小屋が見えたら、ここでようやく一安心だ。
 ここで宿泊組は大休止を取り、あとは景色を楽しみながら歩けばよい。

 お花畑に入っても急勾配はまだ続く。
人によっては高山病が出てくるかもしれない。

白馬岳頂上宿舎で主稜線に出る。
 白馬岳だけではないが、主稜線に出ると同時に見える、同じ主稜線に連なる高い山々と反対側に広がる風景は圧巻だ。

更に、北アルプス最大の白馬山荘。
日帰りのタイムリミットは全行程時間の半分以下でここに着いていることだ。
青春18きっぷを使い、路線バスで帰ろうとする人は、10時45分となる。

白馬山荘の間を通って、いよいよ白馬岳頂上だ。
この先、栂池までの標準タイムはガイドブックで5時間弱だ。
今まで、標準タイムの6割の時間で登れた人は、あと3時間あれば楽勝と思うかもしれない。
しかし、山歩きの場合、登りが一番所要時間の差が出やすい傾向がある。
 平坦地や下りは、頑張って歩いても、遅い人が歩いても、そんなに差が出ないのが普通だ。
 まして、白馬乗鞍から天狗原までは、岩ごろごろの難所が控えている。
 このような場所は、時間に余裕を持って、丁寧に歩かなければならない。

白馬岳からの稜線は快適そのものだ。
だが、三国境、小蓮華山の他にも、細かいピークをいくつか越えていくので、意外と時間がかかる。
いつもそうなのだが、こんな高山でセミが鳴いている。
舟越ノ頭を過ぎると、ようやく白馬大池が見えてくる。

白馬大池のタイムリミットは、ロープウエイ終発の2時間前だ。
これを過ぎたら、迷わず白馬大池山荘の手続きをとる事。
この先も、登りと難所が待っている。

道は岩ごろごろの上をまたぐように歩く。
右下は、白馬大池の湖岸線が迫っている。
最後の登り、白馬乗鞍は、頂上がどこか分からないような山だ。

ここからの下りは、岩の大きさが更に大きくなる。
足の短い人は難儀させられるだろう。
岩の隙間に落ちたらただでは済まない。
ここだけは、いくら時間が迫っていても、丁寧に歩きたいところだ。
初夏はこの間に残雪があり、アイゼンを着けて下ることになるが、岩ごろごろよりもずっと歩きやすい。

天狗原で、やっと一安心できる。
栂池の建物が見えてきてもスピードは落とさないようにしたい。
ロープウエイの乗り場まではまだ15分ほどある。

 ロープウエイの最終時刻は季節によって異なり、16時40分から17時20分だ。
 原則的には20分間隔で出ている。

 ロープウエイに乗ったからと言って安心はできない。
 ロープウエイの下の駅、栂大門からゴンドラに乗り換える。
 ゴンドラの上の駅、栂の森までは、少し歩くことになるが、この間をなるべく早く歩き、早めのゴンドラの箱に乗るようにしたい。

 バス停もタクシー乗り場もゴンドラ駅から斜め右方向に下っていく。
 タクシーの場合、白馬駅ではなく白馬大池の方が安くて早い。

 なお18きっぷをしぶとく使いたい人で、白馬大池発16時29分、白馬発16時39分の普通列車に乗り遅れた人は、白馬大池発17時57分発の普通列車に乗り、松本と甲府の間だけ特急スーパーあずさを利用すること。
 甲府からまた普通列車に乗り換えれば、新宿に0時9分に着く。












posted by 高尾評論 at 22:14| 東京 ☀| Comment(0) | 青春18きっぷ利用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月05日

世界遺産登録後の富士登山

世界遺産になったことで、富士登山客がどのくらい増えるかどうか、高尾評論には分からない。
 ただ、今まで、時間とお金とほんのわずかな体力があれば富士山に登れると思っている人にとっては、敷居が高くなった事だけは確かだ。
 今シーズンから入山料を試行的に徴収するそうだし、将来は入山規制も考えているようだ。

 そんな中で、なるべく環境にも身体にも負担を掛けず、安全に登山するにはどうしたらいいか。ある程度のリスクは背負って登るのだから、山行の最中はなるべく苦痛なく、楽しく、いい思い出の残るものにしたい。

1.夜行登山を止める
 山は夜登るものではない。
 しかし、富士山登山者の過半数が夜行登山をしている現実がある。

 懐中電灯で足元だけを照らしていると、分岐点が分からず、大きく道を間違える恐れがある。
 今度は遠くばかりを照らすと、足元の浮石に気づかず、つまずいて捻挫をしたり、その石を落したりする。
 また、落石があっても、どこから落ちてくるのか分からず、逃げそこなうこともある。
 大勢の人が登っているからといって安心してはいけない。
 人が多いほど、道迷いの確率は下がるかも知れないが、人工落石を受ける確率は上がる。

 それに、夜の富士山は、真夏でも恐ろしく寒い。
 止まると寒さが身に染みるので、無理をして歩き続けることもある。

 夜は山小屋に泊まり、日の出まで小屋に留まることだ。
 それが嫌なら、純粋日帰り登山をするしかない。


2.天候、体調の悪い日は止める
 山の鉄則だ。
 特に富士山は、眺望が売り物だから、霧の所を延々と歩く意味はない。
 高山の雨の強さ、特に雷の怖さは、受けてみないと分からないだろう。
 富士山の天気で注意するのは、天気以上に風だ。
 強風注意報が出ている時、登り道で無風状態でも、頂上に上がると急に風が吹き付けることがある。
 いくら快晴でも、富士登山のハイライト、お鉢巡りをすることはできなくなる。
 
 悪天候、悪体調のリスクを最小限にするには、出発直前まで、行くべきかやめるべきかの最終判断を保留しておくことだ。
 5合目に着いても、歩きだした後でも、天気と体調が悪ければ、すぐに引き返すべきだ。

 その点は、高尾あたりに登るのと同じ感覚でいい。
 ただ、荷造りだけは、前日までに終わらせておきたい。
 ドタキャンした後、気まずくなるような相手なら、最初から一緒に登る計画を立てないことだ。

 今後、富士山の登山客数規制で、登山日を予め登録させ、その人たちだけを登らせる案がある。
 そうなったら高尾評論は、富士登山を躊躇なく放棄する。
 何日も前に予定日を決められ、変更ができないようなものは、登山とは言えない。
 登山とは、その瞬間の山の状態、天候、体調を自分で感じ、自分の判断で最適な計画を立て、山に登ってからも臨機応変に変えられるものだと、高尾評論は思っている。


3.頂上でのご来光をあきらめる
 どうしても頂上でのご来光を拝むのなら、頂上の山小屋に泊まるしかない。
 ただ、吉田口、須走口では、ほとんどの山小屋からご来光を拝める。
 5合目で迎えるご来光だって立派なものだ。
 それに富士山の魅力はご来光だけではない。


4.純粋日帰りを考える
 これを言うと、怒られそうだが、敢えて言うことにする。
 富士山中の滞在時間が短ければ、登山者ひとり当たりの環境への負担は少ないのは確かだ。
 滞在時間が短ければ、排泄物も少なくて済む。
 登山道をちょっと外れて休憩すれば、山は壊れるので、休憩箇所も少ないほど良い。
 既に山小屋は満杯の状態だし、増設は簡単にはできないだろうから、宿泊は初心者や高齢者に譲る。

 ただ体力と技術について、確固たる実績や裏付けがないと、純粋日帰りはできないことは確かだ。
 
 
5.お鉢巡りをする
 吉田、須走、御殿場、富士宮の4登山道を上がった場所は、いずれも「頂上」という名前がついている。
 しかしこの「頂上」は、外輪山の一角にすぎない。
 ここまでの道中はいわば、富士登山の前座であり、外輪山を一周するお鉢巡りこそ、富士登山の真打だと、高尾評論は思う。
 天気のいい日、お鉢巡りをすると、伊豆、三浦、房総半島から、日光、上信越、3アルプスまですべて見ることができる。
 尾根自体のスケールは、北アルプスや南アルプスの主稜に負けるが、展望、特に遠望に関しては、日本一のスケールを誇るスカイラインだと思う。

 ただ、登山者のほとんどは、各登山口の頂上で引き返している。
 時間がないのか、体力が持たなかったのか分からないが、実にもったいないことだ。
 せっかく富士登山をするのなら、ぜひお鉢巡りを計画に入れ、その分時間と体力とに余裕を持って登ってほしい。

 お鉢巡りのまわり方としては、反時計回りが楽だろう。
 一番の急勾配、剣ヶ峰から富士宮口頂上までが下りとして使える。
 ここの下りが怖いという人もいるが、下りの基本を押さえていれば、なんでもない勾配だ。
 お鉢の北西側、つまり吉田口、須走口頂上から剣ヶ峰までは比較的空いていて、ここで大休止や昼食を取ればいいと思う。


6.剣ヶ峰登頂をあきらめる
 剣ヶ峰は富士山の中の最高峰、日本最高地点だ。
 ここに登らず何とすると言うことで、最近は写真撮影待ちの人で大混雑だ。
 剣ヶ峰は、外輪山の一角なのだが、お鉢巡りの道からほんのちょっとずれており、シーズン中はその分岐点からずらっと並んでいる。
 日本最高地点に立ちたい気持ちは分かるが、貴重な登山時間の何分の一かをここで費やし、証拠写真を撮る意味はどのくらいあるのか。
 展望を楽しむなら、お鉢巡りを一周することで十分目的は達せられたはずだ。
 剣ヶ峰を出発すれば、あとは下りだけだが、その下りは標高差が千数百mある。
 途中で夕立や日没に会わないよう、適当に見切りをつけることにしよう。
 剣ヶ峰登頂は、一生に一度でいいのではないか。


7.何か嫌な事があれば、すぐに引き返す 
 富士山は天候、体調の急変が起きやすい。
 特に体調は、高山病と言う予期せぬ事態が発生することがある。
 これは、どんなに体力がある人でも、他の山をたくさん歩いた人でも、起き得るもので、努力や根性ではどうにもならない。
 登ってみたが、何となく気が乗らないということもある。
 富士山との相性が悪いのかもしれない。
 そんな時も含め、嫌な事がひとつでもあれば、その先の登山を中止するに限る。
 富士宮口を除き、ほとんどが登山道と下山道が別になっているが、登山道を降りていけない法律はない。
 登っている人には迷惑だろうが、遠慮しながら登山道を下山することにしよう。


8.根性登山はしない
 登山とはとにかく耐えることだと思っていないだろうか。
 確かに最小限の忍耐は必要だが、たとえ富士登山とは言え、家の周りを散歩するのと同じくらいの負荷で登るのが理想だと、高尾評論は思う。
 本番の富士登山で、そのように歩けるよう、普段からまともな登り方、下り方ができるように努力することは大いに結構なことだ。
 登り下りの基礎ができていないのに、富士山に登るときになって初めてがむしゃらにがんばるのは、泥縄と言われても仕方ない。
 苦しいだけでなく、事故も誘発しやすいことは明白だ。
 その場は大きな事故なしに帰宅できたとしても、その後何日間も寝込んだり、足をひきずったりしていては、いい登山だったとは言えない。


9.まじめに登山する
 前に述べたことと矛盾するようだが、決してそうではない。
 登山と言う行為自体、スポーツの領域に入ることは異論ないだろう。
 家の周囲の散歩が練習、高尾登山が練習試合、富士登山は本番試合に相当する。
 球技でも格闘技でもレースでも、本番で多少冗談を言うくらいならともかく、絶えずへらへらしながら試合に臨んだら、相手に失礼だし、結局のところ、自分でも面白くなくなるだろう。

 富士山は、他の山と比べ、自由度の少ない登山になることを予め知っておいてほしい。
 登山道を少しでも外れると、落石を引き起こすので、登山道、下山道は厳格に決められており、休憩場所もかなり制限されている。
 その上、登山道の途中で不用意に止まれば渋滞を引き起こすし、強引に追い越しを掛ければ転倒も起きるだろう。
 シーズン中、富士登山をするということは、家畜のように場所とペースを管理されて移動せざるを得ないのだ。
 今後、この傾向はますます強くなるだろう。


10.それでも登り下りが苦手な人は、富士登山はしない
 それを言っちゃおしまいかとも思うが、事実だから言っておいたほうがいいだろう。
 山歩きは、数あるスポーツの中でも一番原始的かつ根底的なスポーツだ。
 特別に高齢とか、深刻な持病や障害のある人を除けば、山の登り方、下り方など、そんなに難しいものではない。
 富士山も一般コースを歩いている分には、難所と言うところが1箇所もない。

 それでも、登り方のペースがどうにも掴めなく、歩いている時間よりも休んでいる時間の方がはるかに多ければどうなるだろう。
 天気が良ければ、1合目ごとにある山小屋が、手が届くくらい近くに見える。
 だがいつまでたってもそこに着かないもどかしさは、その当人と同行者しか分からないだろう。

 下りもそうだ。
 急斜面と呼べるところは1箇所もなく、肩の力を抜いて、膝のクッションを使い、楽に下ればいいのだが、それができないと悲惨だ。
 何しろ、単調な道を標高差で千数百mを下るのだ。
 富士山の下りで恐怖症が発生し、カニさん歩きになってしまったら、そのカニさん歩きで1万数千歩を下らなくてはならない。
 特に下山道は、ほとんど山小屋も茶屋もなく、荒涼とした斜面が延々と続き、ほっとする場所がないのだ。


11.できれば、須走口から登る
 須走口5合目の標高は1970mだ。
 富士宮口や吉田口に比べると標高差で300〜400mほど余分に登ることになる。
 しかし、実際には5合目付近は比較的なだらかで、樹林帯を歩くため、思ったほどはきつくはないし、実質的な所要時間もそう変わらない。
 吉田口や富士宮口よりも空いているので、自分のペースで登れるし、登山道の負担は少ないはずだ。
 ただ、8合目で吉田口と合流し、そこから先は猛烈な混雑となる。


12.できれば、御殿場口に下る
 御殿場口5合目の標高は1440mで、さすがに登りには勧められない。
 しかし、下りでは富士山の大きさをたっぷり感じられるし、大砂走りを下る豪快さは格別だ。
 下りはここ専用の道なので、渋滞とはほぼ無縁だ。
 途中であまりにも長いと思った人は、途中で宝永山の麓を通って、富士宮口6合目に出る事ができる。
 このコースも宝永火口が見えて、なかなかいい。

 富士山頂を目指さない渋いコースとしては、富士宮口から登り、6合目でこの宝永火口を通り、御殿場口下山コースの大砂走りを5合目まで下る。
 ほとんどの人にとって、大混雑の富士山頂よりも、こちらを歩く方が、満足度が高いような気がする。


13.富士山だけが山じゃない
 これから何かと敷居が高くなる富士山にいつまでもしがみついているのもいかがなものか。
 富士山は日本にある山の中で、ずば抜けて大きい。
 お鉢巡りをしないのなら、富士山を歩く時間のすべてを、巨大な斜面の登り下りに費やしているに過ぎない。
 良く言えばスケールが大きい、悪く言えば大味、単調な山歩きだ。
 渋滞と極寒と高山病の中、それだけの山歩きに10時間以上を費やす必要があるかどうか、高尾評論は常に疑問を感じている。
「人生の記念に、冥途の土産に」
 と言われれば返す言葉はない。
 しかし、他の山域なら、10時間も歩けば富士山よりもずっと変化のある山歩きができることは確かだ。

 富士山を本当に楽しめるのは、快眠、快便ができる朝型の人で、登り、お鉢巡り、下りを入れて、余裕で日帰りできる人に限られるだろう。

 首都圏の人で、単に山を歩きたい初心者なら、ほとんどの人は高尾山で十分だ。
 尾根道、谷間の道、舗装路など、登山道はバラエティーに富み、展望もまあまあ、人がほとんど歩いていない道だってあるし、1日中歩いてもたどり着かないほどのロングコースもある。
 ただ、絶対的標高が低いので、夏の暑さだけはどうにもならない。

 楽をして高い山に登りたいのなら、乗鞍岳に行けばいい。

 富士山のような形の整った独立峰の火山へ登りたいのなら、浅間山を推薦する。
 浅間山は、電車の便は悪いが、車なら渋滞なしで都心から3時間以内で登山口まで着く。
 富士山麓の駐車場からシャトルバスに乗り換えて5合目に行くのと同じくらいだ。
 富士山と同じように知名度は抜群、遠くからもよく分かる山だ。
 途中からの景色は、富士山同様、何も遮るものはなく、抜群の展望を誇る。

 ただ、この浅間山、どういう訳か登山者が少ない。
 不思議な事だ。

 今、浅間山は火山活動が収まっている時期で、中央火口丘のすぐそばの前掛山まで登山が許可されている。
 時期限定の山なのだ。

 高尾評論のお勧めコースは、
 車坂峠→トーミの頭→黒斑山→蛇骨岳→J-バンド→賽の河原→前掛山→草すべり→トーミの頭→車坂峠
 の周回コースだ。
 前半の第2外輪山縦走路から見る浅間山本山は、三つ峠から富士山を望むような景色であり、後半の前掛山からは、富士山頂からの眺望に匹敵する風景が待っている。








posted by 高尾評論 at 20:50| 東京 ☀| Comment(0) | 富士山と高尾山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月02日

富士山弾丸登山

 富士山の弾丸登山が批判されている。
 弾丸登山とは、宵のうちに五合目に着き、夜を徹して登る。
 山頂でご来光を仰ぎ、そのまま下山するというものだ。

 このような徹夜登山に対しては、高尾評論も反対だ。
 だいたい、どんな登山形態でも、徹夜登山と言うのはあり得ない。
 夜、山を歩くというのは、体調の問題だけでなく、道に迷ったり、落石を誘発したり、落石に気づかなかったりして、とにかく危ないのだ。

 山小屋での1泊パターン
 富士登山で一番多いパターンは、朝、自宅を出発し、昼前に五合目に着くプランだ。
 五合目で昼食を食べてから登山を開始し、夕方、8合目あたりの山小屋に着く。
 それから夕食、仮眠を取り、夜中の1時くらいに起床し、山頂でご来光を仰ぐ。
 
 しかし、これが本当に安全で健康的な富士登山だろうか。

 バスや車を降りたら、すぐに歩き出さず、五合目で昼食をとるのは、高度順応を兼ねるので、いいことだ。
 しかし、落雷が多い夕方に、8合目付近を歩くことになる。
 富士山は雷を避けるところがなく、どこに落ちてもおかしくない。

 さて、無事8合目の小屋に到着したら、寝室に何とか自分の体を入れるだけのスペースを確保し、普段の休日の昼食よりも少しだけ遅い時間帯に夕食を無理やり食べることになる。
 超満員の部屋でぐっすり眠れることができたあなたは、大物だ。
 ほとんどの人が、空気が薄く二酸化炭素の割合だけが多い山小屋で、眠ったか眠らないか分からないまま、長い時間が過ぎていく。

 やっと眠れたかなと思う午前1時、起床だ。
 普段ならそろそろ寝ようとする時刻に起き出し、更に活動しなければならない。

 山小屋を出ると、すごい寒さだ。
 この中を山頂まで歩かなくてはならない。
 当然夜行登山になるため、道迷い、落石のリスクも高い。

 頂上に近づくほど、歩くペースは落ち、渋滞が始まる。
 トップシーズンは午前1時に8合目を出ても、渋滞にはまり、ご来光までに頂上に着かないことがほとんどだ。

 頂上をあきらめ、ご来光に良さそうな所を選んで場所取りをする。
 場所取りをしてから、日の出までは猛烈な寒さに耐えることになる。

 何とかご来光を仰ぎ、再び頂上に向けての出発だ。
 と行きたいのだが、みんな一斉に立ち上がり、歩き始めるので、今まで以上の渋滞で、どうにも進まない。

 やっとの思いで頂上にたどり着いた。
 しかし、ここが本当の富士山頂ではない。
 標高3776mの日本最高地点は剣ヶ峰といい、吉田口や須走口から行くと、ちょうど反対側になる。

 火口を中心に、外輪山を1周するコースは、富士山のハイライトとも言えるが、もうその体力は残っていない。
 寒さと疲労で意識が朦朧とした状態で下山することになる。
 富士山の一般的下山路で断崖絶壁はないが、不注意で浮石に乗ってのねん挫などは多い。

純粋日帰りという選択

 高尾評論の富士登山の提案は、純粋日帰りだ。
 朝、日が昇ってから活動を開始し、日没前に下山するというものだ。
 こんなことを述べると、弾丸登山以上の無謀登山だとお叱りを受けるかもしれない。

 しかし、実際に歩いてみると、弾丸と言うよりも紙鉄砲や水鉄砲以下の速度だ。
 当然、走る必要は一切ないし、速足を強いられることもない。
 ゆっくりゆっくり歩いても、無駄な休憩さえしなければ、十分可能だ。
 5合目では準備体操と荷物チェックを兼ねて30分程度の高所順応をする時間もあるし、富士登山のハイライト、お鉢巡りもできる。

1秒で10pの標高を稼げば、純粋日帰りが可能

 単純な計算をすれば分かる。
 1秒で10p
=1分で6m
=1時間で360m
 つまり、
 富士宮口(標高差1350m)は3時間45分
 吉田口(標高差1500m)は4時間10分
 須走口(標高差1800m)は5時間
 で登りきることができる。

 1秒で10p登るとはどういうことだろうか。
 普段、我々が使っている階段の段差は17〜18p程度だ。
 その階段を1段に1.7〜1.8秒以上かけて登るというものだ。
 実際の階段をこのペースで登ったら、あまりにも遅く、自分はいらいらするし、周囲からは奇異の目で見られるに違いない。

 もう少し、実用的に考えてみる。
 だいたい、人が真面目に歩いている時の歩数は1分間当たり100〜120歩だ。
 1歩当たりの段差は5〜6pになる。
 平坦な場所も少しはあるし、休憩時間もある程度取りたいから、段差を8pくらいにする。
 1歩で段差8pを登るということは、1歩で30〜35p程度、つまり山靴を履いた自分の足ひとつ分くらいを出す。
 だいたい、普段歩く歩幅の半分弱だ。
 この歩幅を保ち、平地と同じ1分間当たり100〜120歩のペースで、水分、養分補給や着るものの調整、トイレ以外、なるべく休憩を取らずに進めば、日が昇ってから5合目を出ても、余裕を持って、午前中に頂上に立つことができる。
 
 ただ、吉田口のように、明確な階段が造ってある所は、段差8pを自分で区切りながら登ることはできない。
 このような場所は、階段1段を2,3歩かけて登ることだ。

 1秒で10p登る時の相対的スピードはどのくらいだろうか。
 まず、5合目の登山開始直後は、ほぼすべての人に抜かされる。
 6合目付近になって、早くも脱落しそうな人1割くらいは抜くことができるが、まだ9割の人に抜かされる。
 7合目になると、本格的な疲れが出る人がでてくるが、それでも、抜かされる割合は8割程度ある。
 8合目で高山病の影響が出るので、抜かされる割合は7割程度になる。
 9合目以上では、多くの人が疲労の頂点に達する。
 それでも抜く人と抜かされる人の割合はほぼ同じくらいだ。

 この歩き方で、多少の休憩を入れ、4時間弱から5時間で頂上に立つことができるのだ。

 7月1日、各放送局は、世界遺産登録後初の山開きの様子を報道した。
 まだ30代と思われる屈強のアナウンサーが、思い切り足を振り上げながら登っていた。
 そして、息絶え絶えになって、
「富士山は余裕を持って登るように、弾丸登山は決してしないように」
と訴えていた。
 
 悪いのは、山小屋に宿泊せずに登ることではなく、弾丸のようにがむしゃらに登ることだ。
 自分の体力を考えず、空気の薄い高山でいつもの階段を登る調子で歩いていると、心拍数は1分当たり軽く150を超えているだろう。
 普段運動をしている人なら別だが、何もしていない人がこの状態で富士山に登ると、効率が悪いばかりか、体にも悪いことは目に見えている。

 では、誰でも1秒10pのペースで5合目から頂上まで登れるのか。
 こればかりは何とも言えない。
 しかし、推測はできる。
 高尾山に登ってみればよい。
 清滝のケーブル駅脇から稲荷山尾根を通り、休憩なしで高尾山頂まで、1時間5分で歩くペースが1秒10pのペースだ。
 もう少し短距離なら、清滝から稲荷山展望台まで30分だ。
 素直で勘のいい人なら、一度登れば要領はつかめるだろう。

 ただ、富士山には高山病と言う問題があり、これだけは低山では見当がつかない。
















 
posted by 高尾評論 at 20:30| 東京 ☀| Comment(0) | 富士山と高尾山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。