2013年06月28日

18きっぷで燕岳日帰り

 燕岳は明るい山だ。
 優雅な花崗岩の峰が聳え立つ様子は、「北アルプスの王女様」と称されている。
 むしろ、純白の砂のステージの上に、同じ方向を向いた岩が何十にも連なっている様は、「北アルプスのAKB48」というべきかも知れない。
 「つばくろ」と言う名前もいい。

 しかし、燕岳へ登る合戦尾根ルートは、山頂とは対照的に、泥臭いルートと言えるだろう。
 燕岳の登山口の中房温泉までは、断崖絶壁の1車線の道を谷の奥深くまで延々と入って行く。
 バスやタクシーは昼間でもライトを点けているほどだ。
 やっと着いた登山口の駐車場は、シーズン中の土曜日には、午前4時前に満車となり、2q以上下った場所まで路上駐車していることも良くある。

 そんな登山口だから、マイカーをやめ、電車とバスを使っていくのもいいだろう。
 狭い山道を夜通し運転して、駐車場でアルコールを飲みながら夜が明けるのを待つより、夜行列車の方がまだ健康的だ。
 それに、帰り道、へとへとの状態で睡魔と闘いながら、中央道や関越の渋滞にはまることを考えれば、たとえ各駅停車で時間がかかろうとも、そちらの方がずっと楽だろう。

 新宿23時54分発のムーンライト信州は穂高駅着4時53分だから、十分とは言えないまでも、比較的眠れる時間がある。
 駅前からは5時5分発のバスに接続し、中房温泉には6時ちょうどに着く。
 帰りの最終バスは中房温泉16時ちょうどだから、持ち時間は10時間ちょうどだ。

 時間の配分はだいたい以下のようなものだろう。
 燕岳近くにある燕山荘までの登り:4時間 (準備運動、荷物整理、途中休憩を含む)
 燕山荘から燕岳往復:2時間 (食事時間を含む)
 燕山荘からの下り:3時間
 予備時間、中房温泉での入浴:1時間

 中房温泉からの合戦尾根は、北アルプス3大急登と言われているが、全然急ではない。
 陣馬新道や相模湖駅から明王峠の道と、大して変わらない勾配だ。
 その点では、北アルプス入門の山と言えるだろう。
 変わるのはその登りが延々と続く事だけだ。
 合戦尾根の標高差は1260mだから、陣馬新道の2.4倍、稲荷山尾根や6号路の3.1倍になる。
 
 だから、燕岳登山は、技術的にどうのこうのと言うより、体力勝負の割合が高い。
 ということは、燕岳往復を日帰りできるかどうか、事前にある程度確かめられる。
 ケーブルカーの清滝駅前から高尾山頂まで、稲荷山コース又は6号路を、登り1時間以内、かつ下り50分以内で歩けるだろうか。
 しかも、高尾山頂に着いた時、心臓バクバク、息ゼイゼイではいけない。
 自分では急ぐつもりはなく、普通の感覚で歩いていて、この時間内に歩けなくてはいけない。
 これが日帰りの最低条件になる。
 それでも、夜行での睡眠不足、高山病、天候の急変など、何が起こるか分からない。
 いかに難所がない道とは言え、確実に登れる保証はない。

 自信がなければ、燕山荘に1泊するか、麓の有明温泉か中房温泉に前泊して薄暗いうちに出発するか、思い切って止めるか、どれかだ。
 「取りあえず、行けるところまで行ってみよう」
なんていうのは、やめてほしい。
 中房温泉から合戦沢の頭までの標高差1000mは、延々と樹林帯の登りとなっている。
 途中、ちょっとした場所で常念山脈の主稜や安曇野の盆地が瞬間的に見える所もあるが、後は単調な登りが続く。
 燕岳は、最後の標高差300mだけがおいしいところなのだ。
 ここまで登らずに途中で引き返すのは、実にもったいない。
 もったいないからと言って無理をして引き返すのを止めていると、途中で日が暮れたり、技術や脚力がないのに慌てて下って大怪我をすることだってある。

 思ったよりも時間がかかったり、天候急変など、アクシデントに遭った時のベストな選択は、燕山荘に宿泊する事であることは、誰もが認めることだろう。
 しかし、燕山荘に泊まる予定を組んで登山するのと、急きょ燕山荘に泊まるのとでは、高尾評論を含めた俗人にとって、全然対応が違う。
 自宅にいる家族への連絡、翌日の職場への休暇届、麓の宿のキャンセル、電車やバスの指定席のキャンセルなど、携帯が通じるかどうか分からないところから、いろいろな手続きをしなければならないのだ。

 夜行日帰りを計画するのなら、自分の歩く能力を客観的に判断し、天気と体調を確認したうえで出発しよう。

 高尾と違い、ほとんどの山の登り口には登山者カードがある。
 これは絶対に提出しよう。
 カードに記入する時間がもったいない人もいるだろう。
 そういう人は、事前に家で書いたカードをポストに入れるか、メールで送っておこう。

 一番重い飲料水はここで補給できる。
 この先、第1ベンチでも水は補給できるが、沢まで降りることになり、お勧めできない。
 次の補給場所は合戦小屋、その次は燕山荘になる。
 重い荷物を持つのが嫌でお金の余裕がある人は、そこで買うことにしよう。

 さて、合戦尾根の取り付きは、稲荷山尾根の取り付きよりも急だ。
 いつもの高尾を歩くよりも意識的に歩幅を狭く、息が上がらないように歩こう。
 途中、休憩所は、第1ベンチ、第2ベンチ、第3ベンチ、富士見ベンチ、合戦小屋、合戦沢の頭の6か所ある。
 各休憩所間の標高差は約200mだ。
 清滝駅前から高尾山頂まで1時間以内で登れる人なら、別に急ぐつもりはなくても、次の休憩所まで30分で着くだろう。
 合戦小屋まではある程度機械的に登ることになるのはやむを得ない。
 歩行スピードを上げるより、休憩時間をなるべく節約しながら登れば、合戦小屋まで2時間半程度、午前8時半前後に着くはずだ。
 
 合戦小屋は陣馬、景信、小仏城山にある茶屋のようなもので、売店とトイレはあるが宿泊はできない。
 ここで買うべきものがあれば買っておこう。
 立派なベンチがいくつもあって大休止をしたくなるが、高尾評論だったらこのすぐ上の合戦沢の頭で休む。
 合戦沢の頭は、森林限界を突破したところにあり、ちょっとしたベンチがある。

 ここまで来ると、ぐっと視界が開け、槍ヶ岳などを横目でちらちらと見ながら、間近に迫った燕山荘を目指して快適な道を歩く。

 燕山荘に着くと、一気に西側に裏銀座の尾根が見える。
 目の前は黒部源流の深い谷だ。
 振り向くと、安曇野の盆地が細長く延びている。

 さて、ここで時計を見てみよう。
 もし11時を過ぎていて、燕山荘に泊まる予定がないのなら、早速引き返すことだ。
 ここまで5時間もかかった人ならば、燕岳往復に1時間以上はかかるだろう。
 燕岳山頂まで行っても、そんなに景色が変わる訳ではない。

 燕山荘に限らず、山小屋と言うのは、扉が閉まっている。
 頑固おやじに睨まれそうな感じがするかもしれないが、もっと気軽に入ってもいいと思う。
 確かにペットボトルや生ビールは高いが、スナック類やカレーライスなどはそんなに高くない。

 燕山荘から燕岳山頂までは風が強くなければ快適そのものだ。
 白砂の中、岩の間をくぐりながら歩く。
 ライチョウは鈍いので、踏みつけないように注意しよう。
 
 山頂直下は道がいくつも分かれるが、一番緩そうな道を選んで登って行こう。
 頂上には花崗岩で造られた背の低い標識がある。
 ここでの記念写真は、一旦裏に回り、標識の隣に顔だけ出すのが正式な撮り方である。

 12時までには燕岳山頂を出発したい。
 帰りは、あっという間に樹林帯に突入する。
 夕立があっても、比較的安全なのが、この合戦尾根の長所だ。
 途中、道が二手に分かれている個所があるが、来た時を思い出し、条件のいい方の道を選ぶことにしよう。
 
 16時ちょうどの中房温泉発のバスに乗れば、穂高駅発17時45分の各停に接続し、松本、甲府、大月で乗り換えとなり、23時08分に新宿に着く。

 なお、ここでは夜行日帰りとしたが、18きっぷを利用して燕山荘1泊もいい。
 山手線内から穂高までは正規運賃4310円なので、片道でも十分元は取れる。












posted by 高尾評論 at 19:29| 東京 ☀| Comment(0) | 青春18きっぷ利用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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